CMX

R6年 Emergence Conference 抄録

本講演はオンラインにて医学研究先端講義「先端医学トピックス」としても開催されます。

(Lecture 1)

湯川 博 先生

名古屋大学 量子化学イノベーション研究所 特任教授

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ナノ量子センサーによる最先端イメージング診断・治療技術
Advanced imaging diagnosis and treatment technology using nano quantum sensors

2023年度ノーベル化学賞技術である最先端蛍光プローブである量子ドット(QDs)や窒素-空孔中心(NVC)を有することで光検出磁気共鳴特性を示す蛍光ナノダイヤモンド(FNDs)などのナノ量子センサーを活用し、細胞や生体に対する新規イメージング診断・治療技術の創製に取り組んできた。本ワークショップでは、ナノ量子センサーの最先端計測技術に加え、再生医療やがん医療における応用成果についても紹介する。

(Lecture 2)

合田 圭介 先生

東京大学大学院理学系研究科 教授

細胞のウォーリーを探せ!
Where is Wally in the cells?

多種多様な細胞の組織、構造、形態とそれに関連する生理学的機能を解明することは、生物学や医学における重要な課題の一つです。しかし、現在の生物学・医学研究では、顕微鏡やピペットを用いた目視による検出や手作業による細胞単離が主流であり、膨大な時間と労力がかかるため、細胞の網羅的な調査は困難を極めています。本講演では、これらの課題を解決するために、多様な細胞集団の各細胞を網羅的に撮像・識別し、深層学習を用いた解析結果に基づいて所望の細胞(ウォーリー)をリアルタイムで発見・選抜する革新的な細胞スクリーニング技術を紹介します。また、この技術の幅広い応用展開についても解説します。

(Lecture 3)

大友 康平 先生

順天堂大学 大学院医学研究科 准教授

生体組織の内部微細形態を可視化する3D蛍光顕微鏡技術開発
Novel 3D fluorescence microscopy to visualize internal microstructures of biological tissues

蛍光顕微鏡法は、現在の生命科学研究において、重要なツールの一つとなっている。一方 で、本法は光を使った可視化解析法であり、不均質かつ不透明な三次元構造を持つ生体組織の 内部へのアクセスに難があった。近年、これを解決するために、各方面から様々な新規手法が 提案されている。本発表では、生きた標本を標的とした二光子顕微鏡法、透明化組織標本を標 的とした光シート顕微鏡法について、最近の我々の技術開発を紹介したい。

(Lecture 4)

佐藤 守俊 先生

東京大学大学院総合文化研究科 教授

生命現象の光操作技術の創出
Manipulating biological processes by light

筆者らは,光を使って生命現象を「見る」だけでなく,それらを光で「操る」ことができるとしたら,ライフサイエンスを大きく変えることができるかもしれないと考え,新たな技術の開発を行ってきた.本講演では特に,生命現象の光操作を実現するための一般性・汎用性の高い基盤技術の開発と,これを用いたゲノムの光操作技術の開発について紹介する.

(Lecture 5)

森田 梨津子 先生

大阪大学大学院生命機能研究科 准教授

皮膚・毛包の1細胞解像度ライブイメージング
Single-cell resolution live imaging of skin and hair follicles

皮膚・毛包は、幹細胞生物学の進展を牽引してきたモデル器官であるが、その幹細胞の形成メカニズムは未解明な点が多い。本講演では、独自に開発した1細胞解像度ライブイメージングと1細胞トランスクリプトミクス、空間解析を組み合わせたアプローチを用い、成体毛包の恒常性維持に寄与する毛包上皮幹細胞が胎児期にどのように生み出されるかを解析した研究成果を紹介するとともに、今後の展望を共有する。

(Lecture 6)

大場 雄介 先生

北海道大学大学院医学研究院 教授

バイオイメージング技術の臨床応用
Clinical application of bioimaging technique

慢性骨髄性白血病(CML)は国内患者数約1万人以上で、白血病の中でも患者数が最も多く、6剤の分子標的薬が承認されている。しかし、分子標的薬を使用している患者の49%が処方薬変更を経験しており、高額薬価に加えて、医師も処方してみるまで個々の患者にどの薬剤が効くかがわからないことにより、身体的・経済的・精神的負担が大きいことが課題である。我々はFRETの原理を用いたBCR::ABL1活性専用バイオセンサーである光診断薬「 Pickles」を開発し、この課題解決に取り組んでいるので、大学発スタートアップ活動と併せて紹介する。

(Special Lecture)

永井 健治 先生

大阪大学産業科学研究所 教授

「外れ値」の探求序章―トランススケールスコープの開発と⽣命科学研究への応⽤
Introduction to the Quest for “Outliers” ―Development of the Trans-Scale Scope and its Application to Life Science Researchー

従来の科学的アプローチは、観察対象を構成する主要成分に着眼し、測定された値の中で他のデータとかけ離 れている外れ値を解析対象から除外するのが一般的であった。それ故、外れ値を有する希少成分に関する知見はほ とんど蓄積されていない。本講演では、我々が開発した100万以上の細胞をミクロンレベルの空間分解能で同時観察 可能なイメージング装置「トランススケールスコープ」を紹介し、看過されてきた外れ値的要素へどのようにアプローチす るのかについて概説する。