新型コロナウイルス研究

新型コロナウイルス(SARS-COV-2)に関する研究

1.SARS-COV-2に対するワクチン開発およびヒト抗体(抗体医薬)の開発研究

現在、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)が猛威を振るい、全世界を脅かしています。我が国でも感染者数は増加の一途を辿り、ウイルス伝播阻止対策が急がれます。
SARS-CoV-2は、肺炎を起こすと重症になり、数%の頻度で人を死に至らしめます。SARS-CoV-2は新規ウイルスであるため、世界中の未感染者はSARS-CoV-2に対する免疫を有していないと推察されます。まだ確立された抗ウイルス剤やワクチンがなく、その開発が急がれます。

現在、我々の研究室では、SARS-COV-2に対するワクチン開発研究を行っています。サブユニットワクチンの開発を目指しています。
また、現行の水痘ワクチンを用いたSARS-COV-2遺伝子発現組換えワクチンの作製を行い、弱毒生ワクチンの開発を目指したいと考えています。

最近、我々は、HHV-6Bに対するワクチンの開発(Plos Pathogens, accepted) およびヒト化抗体の開発(J.Virology,2019)に成功しました。さらに、水痘ワクチンを用いた組換え多価弱毒生ワクチン開発に成功しました(Vaccine, 2007)。そこでこれらの技術を用いて、SARS-COV-2に対するワクチン開発やヒト(抗体(抗体医薬)の開発を行います。

新型コロナウイルス感染症に対する抗体医薬開発に着手 
~兵庫県から世界へ向けて~

2.SARS-CoV-2に対する血清疫学調査

ウイルス伝播を抑制するためには、大多数の人が、SARS-CoV-2に対する免疫を持つ必要があると考えられます。しかし、現状ではどれくらいの人が感染し、SARS-CoV-2に対する免疫をもっているのか定かではありません。そこで、住民や医療従事者を対象に血清疫学調査を実施します。これらの研究は、ワクチン開発の基盤にもなると考えられます。

適切な医療活動は、COVID-19を克服するための道を切り開く ~最前線で働く人々へのポジティブメッセージ~

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者対応病院(兵庫県立加古川医療センター)における医療従事者の抗体検査を行い、対象者全員が新型コロナウイルスに対する抗体陰性であったことを明らかにしました。この調査結果は、適切な予防を行うことにより、患者から医療従事者へのウイルス感染を防ぎ得ることを示した所見であり、世界中の医療従事者を大いに勇気づけるものと考えられます。

兵庫県における新型コロナウイルス大規模血清疫学調査

2020年8月6日から10月1日に、兵庫県内の5病院、1施設から提供を受けた10,377人の血清中における新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)抗体の有無を多角的に解析し、中和抗体の保有率がわずか0.15%であることを明らかにしました。この調査結果は、いわゆる第二波が終息の兆しをみせた2020年10月初め時点においても、兵庫県内における新型コロナウイルスの感染率が極めて低いことを示す結果であると考えられます。

COVID-19重症者における中和抗体およびサイトカイン産生量の解析 ~重症者は新型コロナウイルスに対する高い中和抗体を産生する~

さまざまな重症度の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の血清を国内で初めて多面的に解析し、すべての感染患者において新型コロナウイルスに対する中和抗体が産生されており、重症度の高い患者ほど中和抗体価が高いことを明らかにしました。中和抗体産生に伴い、PCRにてウイルスゲノムは陰性になりました。さらに、重症度の高い患者ほどサイトカイン・ケモカイン産生量が多いことも明らかになりました。
 今回の結果は、重症化の可能性が高い高齢のCOVID-19患者に対しては、ウイルス増殖を抑えるために早期に血漿療法(抗体療法)や抗ウイルス剤投与を、一旦重症化した患者に対しては、ウイルスが排除されていることを確認した場合に限って、ステロイドなどによるサイトカインストームの抑制が重要であることを示唆すると考えられます。

第1~4波における新型コロナウイルス感染者の変異ウイルスに対する中和抗体価の詳細な解析

兵庫県立加古川医療センターとの共同研究の下、第1波から第4波におけるさまざまな重症度の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の患者血清中における中和抗体を定量的に調べました。対象ウイルスは、現在国内で広がっている変異型(英国型・アルファ株;B.1.1.7)、および懸念される変異型(ブラジル型・ガンマ株;P.1、南アフリカ型・ベータ株;B.1.351)を用いました。すべての感染者において英国型(アルファ株)に対する中和抗体が産生されており、他の変異型に対してもほとんどの感染者において中和抗体を産生していることを明らかにしました。

3.SARS-CoV-2の病原性発現機構についての研究

SARS-CoV-2は、肺炎を起こすと重症になり、数%の頻度で人を死に至らしめます。しかし、具体的なその機構は不明です。我々はその病原性発現機構について研究します。

 

4.ワクチン接種による中和抗体の誘導

ワクチン接種により誘導される中和抗体

中和抗体の作製