神戸大学 医学部付属病院

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病理学 5年生(当時 分子生物学 4年生)「臨床にも基礎医学の研究が活かせている実感があります」

※専攻・学年は取材時のものです。

写真:塚本 修一

Q.いつ頃から医学研究コースを履修しようと考え始めたのですか?
またそのきっかけは何ですか?
元々基礎医学研究の道へと進むために医学科に入学したので、研究室に所属して研究をしてみたいと初めから考えていました。「三回生以降も研究室に通う」ことが医学研究コースなので、二回生の基礎配属実習に引き続いて、自ずと履修することになった、という経緯です。
Q.この分野を選んだ理由は?
大学入学当初、私はがんの生物学や、その新しい治療法の開発に興味を持っていました。そのため一回生の新医学研究コース、そして引き続き二回生の基礎配属実習、三回生からの医学研究コースでは、分子生物学分野 (片岡徹教授) に所属し、がん遺伝子産物Rasに関する研究に携わりました。
平成29年度末(私の四年次終了と同時) に片岡教授が退官されたことで、私は研究室を移動することになりました。三回生での病理学の授業を機に、病理学に興味を持ち始めたことや、それによってがん細胞と間質細胞の相互作用の重要性と面白さに気づいたことで、現在の病理学講座・病理学分野(横崎宏教授) に転属させていただきました。研究生活四年目にして、全く新たな出発を切ったのです。

写真:塚本 修一

Q.このプログラムの魅力は何ですか?
まず何より、学部学生のうちから本格的な基礎研究に携われることです。いざ実験を始めてみると、その大変さがよくわかると思います。実験計画の作成、背景知識の学習、本番の実験、その考察・・・ こういった作業を、比較的時間に余裕がある学部学生時代に経験しておくことは、将来研究を行うことになった時、きっと大きな貯金として帰ってくるでしょう。
もう一つは、定期的に学生の研修会を行っていることです。他の分野で研究をしている学生の発表を聴いたり、互いに話をすることで、よい刺激を受けますし、研究について深く考えることができます。
Q.現在の取り組み、今後の取り組みを教えて下さい。
当研究室では、「食道癌と間質細胞との相互作用」に着目して研究を行っています。間質細胞の中でがんとの関連が深いものとしては、線維芽細胞やマクロファージなどが知られています。腫瘍内に存在する線維芽細胞とマクロファージはそれぞれ、がん関連線維芽細胞(cancer associated fibroblast; CAF)、腫瘍関連マクロファージ(tumor associated macrophage; TAM) と呼ばれています。当研究室では、食道癌細胞とCAF、TAMとの相互作用を解析し、食道癌の進展に関わる因子をいくつも報告してきました。私は間質細胞の中でもTAMに着目し、食道癌細胞とTAMとの新たな相互作用を見出すことを目指して研究しています。

写真:塚本 修一

Q.このプログラムに参加し、得たことがあなたの将来にどのように活かされると思いますか?
一つは上で述べた通り、本プログラムでの研究の経験が役立ち、実験に早く順応出来る様になると思います。また、研修会での学生や先生方との交流を通じて、研究との向き合い方を早くから考えておくことで、将来大きな選択を迫られた時に、後悔しない決断をする手助けになると思います。
もう一つは、日頃の生活も含めてのことですが、論理的に考えること、時間を有効に使うこと、そして物事に粘り強く取り組むことのよい訓練になると思います。
Q.これから履修を考えている学生へ一言
少しでもこのプログラムに興味があれば、是非履修してみてください。そのまま研究の虜になるかもしれません。ひょっとしたら、研究の大変さに心が折れかけるかもしれない。でもそれすらも、いやそれこそが特に大切な経験だと思います。
医学科に来られる方の多くは、昔から「よく勉強ができる優等生」という扱いを受けてこられたと思います。試験勉強は基本的に「努力すればその量に相関して高い成果が返ってくる」という世界です。でも研究はその限りではない。
「いくら努力して実験を重ねても自分はいいデータを得られないのに、あの人は少しの期間でいいデータを取った」
なんてことは往々にしてあります。私はこれまで何年も研究を続けてきましたが、論文や学会発表の演題になるようなデータには一度も巡りあったことがありません。
「自分は研究に向いていない」
とか
「このまま研究を続けていていいんだろうか」
と今でも思い悩んでいます。でも、新たな真実を見出すことへの憧れを捨てきれず、結局研究を続けています。新しい発見という嬉しいことだけでなく、苦難の日々も含めて研究なのです。
研究について、研究との向き合い方について、そして人生について、熱く語り合える仲間が一人でも増えてくれたら幸いです。