神戸大学 医学部付属病院

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薬理学5年生(取材当時) 藤田 智成「『疑問の持ち方』を学び、あらゆることを面白いと思えるようになる」

※専攻・学年は取材時のものです。

写真:藤田 智成

Q.いつ頃から医学研究コースを履修しようと考え始めたのですか?
またそのきっかけは何ですか?
私は1年生のときから薬理学研究室でお世話になっており、そのまま2年生以降も続けて薬理学分野でお世話になりました。
私は高校2-3年生の時に、抗がん剤の研究に携わる機会があり、それが私の医学部受験のきっかけになった一方で、大学入学後は研究からは離れて臨床医になるための勉強に専念するつもりでした。しかし、入学式の後に行われた基礎医学の先生方とお話しする立食会で、薬理学分野の古屋敷教授の「scienceとengineering」についてのお話に大変感銘を受け、研究続行をその場で決心しました。
Q.この分野を選んだ理由は?
当時高校卒業後すぐで、高校生物以上の知識がなく、自分が何に興味があるのかも分からない状態で始めたので、研究内容というよりは古屋敷先生の人柄に魅かれたというところが大きいです。

写真:藤田 智成

Q.このプログラムの魅力は何ですか?
ノンテクニカル面では、各方面の最先端を走る先生方と交流する中で、「科学的な見方」に触れ、知識・経験・専門性などに関係なく、あらゆることに疑問や好奇心を抱いたりできるようになる点です。研究で関わった方々は、恐ろしいほどに物事の本質を見抜く方々で、さらに情報処理や言語化が非常に巧みであるように感じています。そういった方々との交流の中で、専門的なことだけでなく、議論の進め方や本質を探りに行く方法が自然と身につきました。
テクニカル面については、薬理学分野では自分の研究テーマが決まるまでは、様々な手技を先生方や大学院の方々に教えていただきました。遺伝子や細胞や化合物を用いた手技から、コンピュータ解析や機械学習、マウスの全身麻酔下手術・行動実験・標本作製、論文抄読・研究発表・学会発表のお作法まですべて事細かに教えていただいたことで、「実験をする」というだけではなく、一連の「研究」を系統的に遂行する力を養うことができました。
Q.現在の取り組み、今後の取り組みを教えて下さい。
製薬企業との共同研究で、新規抗うつ薬の創薬標的の探索を行っています。脳定位固定手術によりマウスの脳の特定の領域にウイルスを注射し、ストレス対処に関わっていると考えられている分子に様々な変異を導入します。そうしてできた変異マウスの行動を解析することで、その分子がストレスコーピングにおいてどのような役割を果たしているのかを調べています。今年度は、実験結果がある程度揃ってきて、学会などに結果を持って行って発表することができました。今後は、論文化を目指して解析や追加実験を進める予定です。
Q.このプログラムに参加し、得たことがあなたの将来にどのように活かされると思いますか?
私が得た中で最も大きいものは、先生方の一挙一動・一言一句から「疑問の持ち方」や「本質の見抜き方」を教わり、「どんなことも興味深いと思える」ようになったことです。それが今後どう活かされるかはまだ分かりませんが、今私は研究を通して人生が豊かになったことを実感しています。
また、基礎医学の先生方と交流していると、自分のものの見方も基礎医学寄りになり、どうしても暗記に走りがちな臨床医学をより深く、根底から理解することができるようになったと思います。さらに、学生の間に動物実験の倫理や研究発表にも触れることができたことで、今後の基礎研究・臨床研究・症例発表などでその経験は活かされると思います。

写真:藤田 智成

Q.これから履修を考えている学生へ一言
研究に携わってみて強く思うのは、「研究をすることによってしか研究テーマは見つからない」ということです。私自身、研究テーマどころか何に興味があるのかすらわからない状態で飛び込みましたが、研究に携わることによって「疑問の抱き方」を学び「『科学的』とはどういうことか」を知り、そこで初めて研究テーマや具体的な研究構成が想像できるようになりました。
多くの方々は研究に対して「やったことないけどとりあえずやめておこう」状態で学生時代を終えます。もちろん、思い切って研究をやってみた結果向いていないことが分かる場合もありますが、一方で自分の人生を変えるほど魅力的な経験となることもあります。また、6年間の学生生活はそれなりに多忙で、学業や私生活と両立できる場合もあれば、厳しい場合もあります。しかしそれはとにかくやってみないと分からないことです。既に興味の方向性が定まっている方はもちろんですが、自分が何に興味があるのか分からない方も、それを知るためにも一度足を踏み入れてみてほしいと思います。