神戸大学大学院医学研究科 外科系講座 耳鼻咽喉科頭頸部外科学分野 神戸大学大学院医学研究科
外科系講座 耳鼻咽喉科頭頸部外科学分野

喉頭外来

1.喉頭外来について

写真 空気力学的検査

 喉頭外来では、声の病気やのどの疾患を幅広く扱っています。毎週水曜日の午前中に、医師2名と言語聴覚士2名で診療を行っています。声の問題で受診された場合は、声に関する問診を記入いただき、声の検査を行います。診察でさらに詳しく声の不調につきお聞きした上で、喉頭内視鏡検査やストロボスコピー検査を行い、声の異常の原因を探ります。そして、医師、言語聴覚士、患者様で最も適した治療を見つけていきます。
また声帯や咽頭に発生する腫瘍の治療に関しても喉頭外来で行っており、可能な場合は低侵襲な経口的手術を提案させていただきます。

2.担当医師

  • 特命准教授 四宮 弘隆

    耳鼻咽喉科専門医 / 頭頸部癌専門医 /がん治療認定医 /チタンブリッジ認定医 / ボトックス施行医

  • 助教 入谷 啓介

    耳鼻咽喉科専門医 / ボトックス施行医

  • 言語聴覚士 岩城 忍

  • 言語聴覚士 高橋 美貴忍

写真 ストロボスコピー検査


3.受診と患者様のご紹介について

 声やのどの病気で当院の受診を希望される方は、かかりつけの先生から「診療情報提供書(紹介状)」と「地域予約」をお願いいたします。
声やのどに関連した患者様のご紹介は、まずは水曜日午前の外来宛に地域医療連携室を通じてご紹介いただけますと、検査も含めてスムーズに診療が可能です。音声治療をご希望の方もまずは喉頭外来に受診いただく必要があります。音声治療は各曜日で対応可能で、担当する言語聴覚士と相談で決定させていただきます。

<喉頭外来>
四宮
入谷

4.診療の特徴

音声疾患

当科では声の不調がある方の診療に力を入れています。声帯ポリープや声帯嚢胞、声帯白板症、ポリープ様声帯などの良性の疾患には手術治療を提案します。声帯結節には声の使い方の習慣が影響していることが多く、まず音声治療を提案します。そのほかにも風邪を引いた後に声嗄れが残ることや、加齢によって声が出にくくなるといった状況にも薬物治療や音声治療などの方法を提案します。かかりつけの耳鼻咽喉科でお気軽に相談ください。

咽頭や喉頭の腫瘍

近年では内視鏡などの検査技術の向上によって、咽頭がんや喉頭がんといった疾患が早期に発見できるようになってきています。当科では早期の咽頭がんや喉頭がんに対して、低侵襲に経口的に手術で切除する治療を積極的に行っています。咽頭がんや喉頭がんは飲酒や喫煙が原因になることが多く、同様にダメージを受けているほかの部位から、繰り返し腫瘍が発生することがあります。放射線治療は一度行うと同じ部位には施行できなくなりますが、経口的手術であれば放射線治療を施行せずに治療ができる可能性があります。

声帯麻痺

当科では声帯麻痺に対する音声改善手術を行っています。声帯の固定位置や患者様の要望を合わせて治療方法を相談します。声帯の動きにかかわる披裂軟骨を内側に回転させる披裂軟骨内転術、声帯を外から内に押すことで声帯の隙間をなくす甲状軟骨形成術I型を基本とし、声帯に脂肪を注入して声帯を膨らませる声帯脂肪注入術を行うこともあります。軽度の嗄声であれば音声治療を行うことで声を出しやすくなることがあり、手術に抵抗がある方にはこちらも提案しています。

痙攣性発声障害

声を出すときに声が震えたり詰まったり途切れたりするまれな疾患に、痙攣性発声障害というものがあります。震えてしまう声帯の筋肉にボツリヌス菌の毒素(ボトックス)を注射することで一定期間症状を緩和する治療や、チタンブリッジをのど仏の軟骨に挟み込んで、声を詰まりにくくする手術治療を行っています。

機能性発声障害

声を出すときには多くのの筋肉がうまく協調して動くことが必要になります。この協調がうまくいかなくなると声帯自体に何も異常がなくても、声が出しにくくなることがあります。こういった状態を機能性発声障害といいます。知らぬ間にのどに力が入りすぎる過緊張性発声障害や、逆に力が入らない低緊張性発声障害があります。心理的な要因が影響して声が出にくくなることもあります。医学的に証明された声の出し方の訓練を行うことで、発声の筋肉の協調を取り戻すことを目指します。近くの耳鼻咽喉科で声帯に異常はないといわれたけれども声の出しにくさが続く場合には一度ご相談ください。
音声治療については、受診いただいてから医師と言語聴覚士が診察をさせていただき、音声治療の適応があると判断された場合に施行します。

5.手術・診療の実績

声帯麻痺に対する音声改善手術、声帯ポリープなどに対する喉頭微細手術、咽頭、喉頭の早期悪性腫瘍に対する経口的手術を中心に行っています。

2019年 手術症例数

手術名 症例数
甲状軟骨形成術 披裂軟骨内転術 11
喉頭微細手術 26
喉頭悪性腫瘍手術(経口的) 20
咽頭悪性腫瘍手術(経口的) 33
合計 90
音声治療 新規患者 65

6.研究

将来より良い医療を患者の皆さんに提供できるよう、当科では次のような研究に取り組んでいます。
既に当科で治療あるいは検査を受けられた方の中で、ご自身の既存情報(画像データ、検査データなど)が使われることを希望されない場合は当科まで(耳鼻咽喉・頭頸部外科医局:078-382-6024)ご連絡ください

臨床研究
  • 喉頭全摘手術後の代用音声の音声評価に関する研究

  • 加齢性の発声障害に対するVFE(vocal function exercise)に関する研究

  • 経口的咽頭癌手術の有効性に関する研究

  • 咽頭癌と食道癌に共通した遺伝子変異に関する研究