研究

肝臓疾患グループ

主な研究

肝疾患における腸内細菌叢メタゲノム解析

近年、明らかな飲酒歴が無いにもかかわらず脂肪肝になる非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の患者が増加しています。NAFLDの成因およびNASHへの進展には様々な因子が関与していると考えられていますが、その一つとして腸内細菌のバランスの変化や免疫系の反応なども影響していると考えられています。私達は、NAFLDの発症およびNASHへの進展と腸内細菌との相関を明らかにするため、NAFLDの方の腸管粘膜・糞便を採取し、腸内細菌叢メタゲノム解析による細菌構成・機能の解析や、培養細胞・細菌実験によるNAFLD発症機序の解析をしています。加えて、他の様々な肝疾患における腸内細菌の関与についても検討しています。

脂肪肝・肥満を抑制するための食事内容についての基礎的研究

NAFLDは生活習慣病のひとつであり、食事を含む生活習慣がその発症や進行に重要な役割を果たしています。しかしながら、NAFLDを予防するために最適な食事内容の詳細は明らかになっていません。私達は、マウスを使った基礎的研究によって、肥満・脂肪肝が起こりにくい食事内容はどのようなものか、食事内容による腸内細菌叢の変化、そして、食事内容によって肥満・脂肪肝が抑制されるメカニズムを調べています。

B型慢性肝炎に対する抗ウイルス治療の効果を明らかにするための臨床研究

B型慢性肝炎に対する抗ウイルス治療は、HBs抗原を低下させる効果や発がん抑制効果などが知られています。私達は、多施設共同研究により抗ウイルス治療を行われたB型慢性肝炎患者のデータベースを作成し、これら効果の検証を行い、より効果的な抗ウイルス治療を目指して検討を行っています。

自己免疫性肝疾患の病態解明に向けた研究

自己免疫性肝疾患(自己免疫性肝炎、原発性胆汁性胆管炎、原発性硬化性胆管炎)の原因や根治的治療法はまだ明らかになっていません。私達は、これまでに肝生検にて診断された自己免疫性肝疾患の臨床像と治療効果を検討し、病態解明への手がかりや、最適な治療法を探索しています。また、自己抗原の同定や肝組織内の免疫細胞について、多施設と共同で研究を進めています。

薬物性肝障害のリスク因子に関する研究

薬物性肝障害、中でもがん免疫療法や分子標的薬などの新しい薬物によって生じる肝障害が問題になっています。特に、多くの患者さんに効果が期待できるがん免疫療法では、免疫が過剰になって生じる特有の副作用が出現し治療中止となってしまう場合があります。このような副作用がどのような患者さんに起こりやすいのかは十分にはわかっていません。私達は、悪性腫瘍に対してがん免疫療法が行われた患者さんについて、肝障害を中心とした有害事象の情報を収集し解析することで、副作用のリスク因子を明らかにしています。副作用をできるだけ抑えることによって、個々の患者さんに対する適切ながん治療を目指しています。

肝細胞癌に対する個別化治療に向けた臨床研究

肝細胞癌に対しては、ラジオ波焼灼治療、カテーテル塞栓治療、肝切除術、肝移植、放射線治療、粒子線治療、全身化学療法など、様々な治療法の選択が可能になっています。私達は、外科、放射線科などの他科や多施設と共同で、個々の患者さんに最適な治療を提供できるよう、治療法と治療効果を明らかにするための臨床研究を行っています。特に、今後さらに発展が期待される全身化学療法については、多施設共同研究でその効果と有害事象、ならびにこれらを予想するための因子を明らかにすることによって、治療効果の向上を目指しています。

肝不全の内科的治療と肝移植の最適化に向けた臨床研究

肝不全に対する内科的治療法は近年発展してきていますが、未だに内科的治療法だけでは救命できない患者さんが多数おられ、その場合には肝移植を行う必要があります。私達は、これまでに経験してきた急性肝不全ならびに慢性肝不全の患者さんの臨床経過を解析することによって、最適な内科的治療法を明らかにするとともに、肝移植の適応と適切な施行時期を検討し、肝不全患者さんに対する治療法の最適化に向けた臨床研究を行っています。