Ongoing activation of sphingosine 1-phosphate receptors mediates maturation of exosomal multivesicular endosomes.

Kajimoto, T., Okada, T., Miya, S., Zhang, L., Nakamura, SI.

Nature Communications. 4:2712. doi:10.1038/ncomms3712 (2013)

 

 エクソームは各種細胞から放出される50nm〜100nmの微小膜小胞であり、様々な機能性タンパク質やRNAなどを積み荷として含んでいます。細胞から放出されたエクソソームは、液性因子として生体内を循環・拡散し、エクソソームに含まれる積み荷がターゲット細胞に作用することにより、生理的・病理的な様々な応答を引き起こすことが知られています。エクソソームに関する報告は年々増加しておりまして、エクソソームの積み荷の解析、エクソソームの生理作用および病理作用、エクソソームの形成メカニズムなどについて多くの知見が得られており、現在も盛んに研究が進められています。ただこれまではエクソソームの積み荷をエクソソームにどうやって積み込むのか、その仕組みについては全く分かっていませんでした。

 私達は最近、スフィンゴシン1-リン酸(S1P)が、エクソソームの積み荷をエクソソームの前駆顆粒へ積み込む(ソーティングする)過程で重要な役割を担うことを明らかにしました。

 具体的にはまず、スフィンゴシンキナーゼ2(SphK2)によるS1Pの産生および生理活性物質S1PによるS1P受容体の活性化のメカニズム(図1)が、細胞膜上のみならず細胞内膜系の後期エンドソームの一種であるエクソソーム多胞体上においても細胞膜とは独立して働いていることを見出しました。さらにこの独立したS1Pシグナリングの恒常的な活性化が、積み荷タンパク質のエクソソーム前駆顆粒へのソーティングを促進することを明らかにしました。実際、エクソソーム多胞体上でのS1P産生を引き起こすSphK2やS1P受容体などのS1Pシグナリングに関与する分子の働きを抑えることにより、積み荷のエクソソーム前駆顆粒へのソーティングが減少し、結果積み荷の減少したエクソソームが放出されることが示されました(図2)。

 現在私達は、積み荷のエクソソームへのソーティングをS1Pシグナリングの制御により自在にコントロールすることで、各種生理応答や疾患の制御につなげることを目指し研究を進めています。

                    

                     図1 S1Pの自己分泌作用                 

                  

 

              図2 S1Pによる積み荷のエクソソームへのソーティング機構

            

 

 

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