胃癌

1. 胃癌について

胃癌は罹患部位として2番目に多い癌であり、年間約4.5万人(厚生労働省「全国がん罹患数2016年」データより)が胃癌で死亡しています。罹患率、死亡率、年齢別にみた場合、40歳代後半から増加し始め、男性のほうが多い傾向にあります。
胃癌は、胃壁の粘膜より発生し、胃壁の外に向かって広がると転移の危険性が増加します。胃癌は大きく分けて、早期癌と進行癌に分類されます。早期胃癌は、癌の広がりが粘膜または粘膜下層までにとどまっているものをいい、筋層をこえて広がったものを進行胃癌といいます。治療の選択や生命予後を知る場合には、癌の深さに加え、転移の程度なども反映した進行度(ステージ)分類が重要になります。

胃癌の転移形式は、以下の3つに大きく分れます。

リンパ節転移

リンパ節転移は、最も多い転移形式です。リンパ節は本来、細菌やウィルス、有害物質などが血液に入らないようにする働きがあります。癌細胞も同様にリンパ節に侵入し、ここで増殖したものがリンパ節転移です。胃癌を切除する際には、一定の範囲のリンパ節を予防的もしくは治療的に摘出し、このことを「リンパ節郭清」と呼びます。胃の周辺にとどまっているリンパ節転移の場合は、リンパ節郭清により治る可能性があります。

血行性転移

血行性転移は、胃癌を構成する微小な血管内に癌細胞が入り込み、血液に乗って他の臓器に転移したものです。肝臓や肺、脳、骨などに転移し、進行度は最も進んだステージ4となり、通常は手術の適応とはならず、抗がん剤を中心とした集学的治療が選択されます。

腹膜転移(播種)

腹膜転移は、胃壁を越えて癌細胞が腹腔内にこぼれることにより生じ、播種とも言います。主に腹膜や小腸、大腸などに生じ、進行すると腸閉塞や腹水が生じます。腹膜転移の場合、進行度は最も進んだステージ4となり、手術で癌を取りきることは難しく、一部の場合を除き、原則として抗がん剤治療を行います。

胃癌取り扱い規約 第15版

2. 胃癌治療に必要な主な検査について

手術を含め、治療方針の決定には、全身・内臓機能の評価と癌進行度(ステージ)の評価が必要になります。検査は、入院で短期間に集中して受けていただくことも可能です。

  • 上部消化管内視鏡検査、CT検査、PET検査で癌の進行度(ステージ)評価を行います。一部の進行癌に対しては、CTやPETでの微小な転移評価が困難となる場合があるため、腹腔内観察を目的に全身麻酔下での審査腹腔鏡手術を行う場合もあります。
  • 採血、心電図、肺機能検査など、全身・内臓機能の評価を行います。

3. 初診から手術までに要する期間・入院期間の目安

  • 初診から手術までの期間:2~3週間
  • 入院期間:1~2週間

4. 胃癌の治療にはどんなものがありますか?

胃癌の治療は、進行度によって異なります。当院での治療は、日本胃癌学会が作成した「胃癌治療ガイドライン」を基本として治療を行っています。また、更なる生命予後の向上を目指し、JCOG(日本臨床腫瘍研究グループ)やKSCC(九州消化器癌化学療法研究会)などの臨床試験へも参加しています。
胃癌の代表的な治療方法は、①外科治療、②化学療法(抗がん剤治療)、③内視鏡治療(胃カメラ)の3つです。当科では主に外科治療と化学療法を行っています。近年の化学療法の進歩により、患者さん個々の進行度にあわせた治療、すなわち外科治療単独で行う場合と、それぞれを組み合わせた治療(集学的治療)を行っています。内視鏡治療は早期胃癌の一部のみが対象であり、消化器内科で治療を受けていただきます。

さらに、当科で特に力を入れて行っている治療の一つに低侵襲治療が挙げられます。患者さんの体の負担を少なくすることを目的に、腹腔鏡手術やロボット支援手術などの低侵襲治療を積極的に行っています。

低侵襲治療:腹腔鏡下胃切除術とロボット支援下胃切除術

早期胃癌や一部の進行胃癌に対して、日本消化器外科学会専門医や日本内視鏡外科学会技術認定医を中心に低侵襲治療を積極的に行っています。
腹腔鏡下胃切除術は、本邦で報告されてから30年以上経過しましたが、当科では現在までに1000例以上の手術を施行してきました。ロボット支援下胃切除術も保険適応下に積極的に行っており、幽門側胃切除、噴門側胃切除、胃全摘等の術式を行うことが可能です。腹腔鏡手術やロボット支援手術には様々な利点があり、経験豊富な施設では開腹手術に比べて手術成績も遜色ないことが報告されています。
また、近年ではすべての患者さんに、3Dもしくは4K内視鏡カメラシステムを用いた低侵襲治療を行っています。これにより、立体視や高解像度による精緻な胃切除術、安全な消化管再建が可能となり、従来よりも短い手術時間で質の高い手術を提供しています。

3D内視鏡システムを用いた腹腔鏡下胃切除術

5. 再建について

胃切除が完了した後に、引き続き消化管の再建を行います。大きく分けて、直接つなぐ方法(Billroth Ⅰ法)と、小腸と残った胃もしくは食道をつなぐ方法(Roux-en-Y法)、食道と残った胃をつなぐ方法(食道残胃吻合法)の3通りです。当科では腹腔鏡下・ロボット支援下での再建を基本としており、より小さな傷で、負担の少ない手術を安全に提供しています。

6. 集学的治療

癌の治療には、外科治療や化学療法(抗がん剤)、放射線療法、免疫療法などがありますが、これらを単独で行うのではなく、癌の種類や進行度に応じてこれらの治療法を組み合わせることにより、より高い治療効果を得ることを目的とした治療のことを「集学的治療」といいます。

「ステージⅡ、Ⅲ」に対する術後補助化学療法

当科では、外科治療を受けたステージⅡ、Ⅲの患者さんには、術後補助化学療法を行っています。胃癌治療ガイドラインでも推奨されており、術後補助化学療法を術後1年間行うことで再発予防効果を期待します。

「高度進行胃癌」に対する術前化学療法

外科治療のみでは予後不良が予想される進行胃癌を対象として、2~3か月の化学療法を行った後に外科治療を行う、術前化学療法と外科治療を組み合わせた集学的治療を行っており、治癒切除率や治療効果の向上を目指しています。

「遠隔転移を有するステージⅣ」に対する外科治療

他の臓器への転移を有するようなステージⅣの進行胃癌は、一般的には手術で根治することが難しく、化学療法が中心となります。近年は、抗がん剤の進歩や分子標的治療薬の導入により、ステージⅣの胃癌に対する治療成績は徐々に改善しています。時に外科治療が困難と判断されても、化学療法後に根治切除が施行できた例もあります。そのため、癌が大きく縮小・消失した際には積極的に外科治療を検討し、治療効果の向上を目指しています。

7. 当院での手術実績