ヘルニア

ヘルニアとは
ヘルニアとは、体内の臓器などが本来あるべき部位から「脱出」「突出」した病態のことです。ヘルニアと聞くと整形外科領域の椎間板ヘルニアをイメージされる方も多いですが、腹腔内にもヘルニアは多く発生します。 当教室では、下記の疾患を中心に、腹腔内に発生するヘルニアの治療を行っています。

食道裂孔ヘルニア

食道裂孔ヘルニアとは、胸部と腹部を隔てる横隔膜の「食道裂孔」が緩くなり、胃の一部が胸腔内に入り込んでしまう病気です。食道裂孔ヘルニアには、以下のような様々なタイプがあります。

軽症で無症状の場合は、治療の必要はありません。しかし、病状が進行すると、胃酸逆流による胸焼け、さらには頻回の嘔吐、嚥下困難、腹痛、胸痛などが出現します。このような場合には、手術治療が必要となります。

1. 食道裂孔ヘルニア手術に必要な主な検査について

一般的な検査
  • 上部消化管内視鏡検査:いわゆる胃カメラ検査です。食道と胃を内部から観察します。
  • 上部消化管透視検査:造影剤を飲みこみ食道と胃の形や、造影剤の流れ方を観察します。
  • CT検査:胸部、腹部を食道、胃を含めて詳しく写します。
専門的な検査
  • 食道マルチチャネル・インピーダンスpHモニタリング検査(MII-pH):胃酸逆流の程度、そして液体・気体逆流の区別が可能となり、症状と合わせて逆流症状を客観的に評価します。
  • 高解像度圧測定検査(High-resolution manometry:HRM):食道の動きが悪くなる食道運動機能障害が隠れていないかを調べます。

2. 初診から手術までに要する期間・入院期間の目安

  • 初診から手術まで:2~4週間
  • 入院期間:1週間前後

3. 外科治療について

傷の小さな腹腔鏡手術で食道裂孔ヘルニア修復術を行います。
具体的には、胸の中に入り込んだ胃を腹腔内に戻し、大きく開いた食道裂孔を縫い縮めます。
必要であれば人工膜で補強します。最後に胃酸逆流を防ぐために、胃を食道に巻きつけて手術を終了します。

4. 術後の過ごし方

術後は、暴飲暴食を避けてください。一時的に食事の飲み込みが悪くなる場合がありますが、徐々に改善していきます。

腹壁瘢痕ヘルニア

1. 腹壁瘢痕ヘルニアについて

腹壁(お腹の壁)は、一番外側から皮膚、皮下脂肪、筋膜、筋肉、腹膜で構成されます。


腹部の手術をする際には、これらを切って腹腔内にアプローチします。手術を終える際に皮膚、筋膜、腹膜を縫い閉じますが、様々な要因(肥満、糖尿病、感染症など)により筋膜が癒合せず、手術後しばらく経ってから穴が空いたような状態になります。その穴から腹部の内臓が脱出した状態を、腹壁瘢痕ヘルニアと呼びます。見た目が問題となるだけでなく、腸がはまり込んで抜けなくなる場合(ヘルニア嵌頓)もあり、注意が必要です。

2. 腹壁瘢痕ヘルニア手術に必要な主な検査について

ヘルニアの大きさを把握するため、CT検査を行います。

3. 初診から手術までに要する期間・入院期間の目安

  • 初診から手術まで:2~4週間
  • 入院期間:1週間前後

4. 外科治療について

ヘルニアの大きさや前回の手術内容を考慮し、手術方法を決定します。いくつかの手術方法がありますが、当院では腹腔鏡を用いて腹腔内からシート状の人工物(メッシュ)で補強する方法を第一選択としています。その他体表側からアプローチし、筋膜を再度縫い合わせる方法、メッシュで補強する方法、縫い合わせてさらにメッシュで補強する方法があります。

5. 術後の過ごし方

手術直後からシャワー、入浴が可能です。力むような動作(重たいものを持つ、激しいスポーツなど)は、腹圧がかかり再発の原因になる可能性が高いため、術後3ヶ月程度は控えていただく必要があります。手術をした箇所に過度の緊張がかからないように、腹帯を3ヶ月~1年程度巻くことがあります。

鼠径ヘルニア

1. 鼠径ヘルニアについて

足の付け根の部分を「鼠径」と呼びます。鼠径ヘルニアは鼠径部分のお腹の壁を支えている筋膜が弱くなる、または生まれつき欠けていることが原因で発症します。立った状態では鼠径の部分が膨らみ、寝た状態では元に戻るのが特徴です。見た目が問題となるだけでなく、腸がはまり込んで抜けなくなる場合(ヘルニア嵌頓)もあり、注意が必要です。

2. 鼠径ヘルニア手術に必要な主な検査について

診察だけで診断されることが多いですが、CTを用いて診断することもあります。

3. 初診から手術までに要する期間・入院期間の目安

  • 初診から手術まで:2~4週間
  • 入院期間:5日前後

4. 外科治療について

体表から手術する方法(前方到達法)と腹腔鏡を用いて腹腔内から手術する方法があります。いずれの方法でもシート状の人工物(メッシュ)で筋膜の弱い箇所を補強します。当院では腹腔鏡での手術(TAPP法(transabdominal preperitoneal approach))を第1選択とし、病状(再発、腹腔内の高度な癒着が予想される場合など)に応じて前方到達法での手術を行っています。

5. 術後の過ごし方

手術直後からシャワー、入浴が可能です。メッシュが身体の組織と十分癒着していないため、術後1ヶ月程度は力むような動作(重たいものを持つ、激しいスポーツなど)を控えていただくことが望ましいです。