教室について
教授就任のご挨拶
神戸大学形成外科学 教授 榊原俊介
このたび、令和7年6月1日をもちまして、神戸大学医学部附属病院 形成外科・美容外科の第三代教授を拝命いたしました。
当教室は1997年、田原真也初代教授により開設されて以来、全国的にも高く評価される再建外科の診療・教育の拠点として発展を遂げてまいりました。さらに、2012年に寺師浩人前教授が着任されて以降は、創傷領域において全国のトップランナーとして診療を牽引し、現在も走り続けております。開設から28年を経た今日、県内外の20を超える関連施設と連携し、地域に根ざした形成外科医療を展開するとともに、形成外科の社会的認知を広げてまいりました。また、総合病院のみならず、開業という形でも形成外科医療を広く社会に還元してきた歴史を有しております。
形成外科(Plastic Surgery)は、人類の医学の歴史において最も古い外科分野の一つとされていますが、一方で今なお柔軟に変化を続けています。この定まることのない進化こそが、形成外科学の最も興味深い側面です。ただし、それは同時に、私たち一人ひとりに、学びを深め、思考を磨き続ける覚悟と情熱が求められる領域でもあります。
神戸大学形成外科のユニークさは、この柔軟性を大切にし、その風土の中で多くの教室員が育まれてきたところにあると感じております。こうした伝統を受け継ぐにあたり、身の引き締まる思いとともに、形成外科が担う社会的使命の大きさと可能性を改めて実感しております。
私ごとではございますが、私はここ神戸で生まれ育ちました。高校卒業後は理学部に進学し、高分子科学(化学)と生物学を学んだのち、神戸大学医学部学士編入学の一期生として医学を志しました。人生の最も多感な時期に科学者を目指す教育を受けた経験は、私の研究者としての基盤となっています。
基礎研究では再生医学や光生物学に関心を持ち、研究室を立ち上げてまいりました。特に光生物学というキーワードと形成外科との繋がりは、一見想像しにくいかもしれませんが、生命の進化と神秘に迫りながら、創傷治療や悪性腫瘍の制御に応用することを目指しております。
このように私はこれまで、再建外科学・創傷外科学、再生医学・光生物学といった臨床と研究の両面から、基礎医学と臨床の橋渡しに取り組んでまいりました。今後も科学に基づく診療を軸に、時代に即した研究・教育・国際化を進め、形成外科の魅力と価値をより多くの方々に届けていきたいと考えております。
特に、未来の形成外科を担う人材の育成に力を注ぎ、神戸大学形成外科・美容外科が国内はもとより海外からも認知され、信頼される存在であり続けるよう尽力してまいります。
今後とも皆様のご指導ご鞭撻を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。
令和7年6月
神戸大学大学院医学研究科 外科系講座 形成外科学分野
神戸大学医学部附属病院 形成外科・美容外科
教授 榊原俊介