附属病院長からのメッセージ

神戸大学医学部附属病院長

黒田 良祐

神戸大学医学部附属病院は明治2年(1869年)に開院した「神戸病院」に始まり、のちに兵庫県立医科大学、そして神戸大学医学部附属病院となり、現在に至っています。開設に際しては、開港して間もない神戸において諸外国に引けをとらない医療を広く提供するため、初代兵庫県知事であった伊藤博文らの呼びかけによって地元の方々から寄付が集められ、神戸らしい洋館の病院が建築され、アメリカ人医師ヴェッダーが初代院長として招かれました。2019年に創立150周年を迎えた現代でも「地域に根差した国際的先進医療の実践」という開院当時の理念が脈々と受け継がれて発展を続けています。

当院は、“@患者中心の医療の実践、A人間性豊かな医療人の育成、B先進医療の開発と推進、C地域医療連携の強化、D災害救急医療の拠点活動、E医療を通じての国際貢献”を基本理念に掲げ、地域医療構想における高度急性期病院として、また、国の指定による特定機能病院としての役割を果たしています。さらには、2017年にポートアイランドに設立された医学部附属病院の分院 国際がん医療・研究センター(International Clinical Cancer Research Center; ICCRC)は、リサーチ・ホスピタルとして先進的治療の推進、医工連携による革新的医療機器の開発・医療機器開発人材の育成、国際医療機関との交流を目標に掲げ、神戸医療産業都市内での連携を強化してまいりました。当院は2021年に臨床研究中核病院として承認を受け、質の高い国際水準の臨床研究や医師主導治験の中心的役割を担う病院として位置付けられています。この役割を果たすためにも本院とICCRCを一体として運営し、医学科、保健学研究科、医療創成工学科が機能的に連携することが重要と考えます。

2023年5月にようやくパンデミック収束が宣言され、わが国でも新型コロナは感染症法上の2類から5類に変更されました。今後も自然災害や感染症パンデミック等の予期せぬ事態が発生する可能性があり、その際の適切な医療体制を整備する一方で、特定機能病院としての機能を維持しつつ、臨床研究中核病院として質の高い国際水準の臨床研究・治験を推進してまいります。神戸大学医学部附属病院が国際的に貢献できる優秀な医療人と研究者を育成する病院として、患者さんにとって安全で最良・最善の治療が受けられる病院として、地域の最後の砦として、さらに発展することを目指してまいります。