医学科長からのメッセージ

医学部医学科長

勝二 郁夫

21世紀において医学・医療の進歩は目覚ましいものがあります。これまで治療法が全くなかった疾患を治癒させてしまう治療薬が開発され、精細で立体的な画像診断が可能になり、侵襲の少ない外科ロボット手術が進歩し、迅速な遺伝子解析と個別化医療が実現されています。AIによる診断の効率化も近い将来に実現化されることでしょう。一方、難治性疾患に苦しむ患者さんが多数存在し、高齢化社会、医療資源の偏在化、2019年に突如出現し、世界中を席巻した新型コロナウイルスの流行など、医学上の困難な問題は山積しています。医療が解決しなければならない問題は増加する一方なのです。

そんな時代においても、高い理想を持ち、医師・医学研究者を目指す若者に、是非、神戸大学医学部医学科への進学を目指して欲しいと考えています。神戸大学医学部医学科は昭和21(1946)年の兵庫県立医学専門学校を源とし、昭和39年(1964)年に国立に移管されて現在の神戸大学医学部になりました。75周年を迎えた神戸大学医学部医学科はノーベル賞、文化勲章、学士院賞、紫綬褒章などを受賞する優れた医学者を輩出し、基礎医学や臨床医学において日本、そして世界のリーダーとなる人材を育ててきました。神戸大学医学部医学科の基本理念は、人間性豊かで高い倫理観ならびに探究心と創造性を有する科学者としての視点を持つ医師/医学研究者を育成するために国際的に卓越した教育を提供することです。

神戸大学医学部医学科では一般入試、総合型選抜、学校推薦型選抜、2年次編入学試験で様々な観点から優秀な学生を選抜しています。個々の背景や目標が異なる多様な学生を選抜して、お互いが切磋琢磨し、人間性と社会性を高め合うことを期待しています。医学部医学科の卒業時に身につけておくべき能力には次のものがあります。I. 礼儀・態度、II. 科学的探究心、III. 知識と技能、IV. 倫理観、V. 向上心、VI, リーダーシップ、VII. 国際性。私共は充実した教育カリキュラムを提供し、6年間に学生がこれらの能力を身に付けられるよう教育しています。

総合教育、基礎医学教育、臨床医学教育では従来の講義だけでなく、デジタルを活用した高度な教育を目指しています。基礎配属実習、医学研究コース、基礎医学実習、基礎医学研究医養成プログラム、ベッドサイド教育、地域社会医学実習、病院実習、多職種協働教育、海外研修などの実践を通じて課題解決能力を養うよう指導しています。医学と医療における進歩は先人達のたゆまぬ努力により成し遂げられた知の財産の上に成り立っています。神戸大学医学部医学科は、卒業後も知を積み重ねて、次世代の医学、医療の進歩の担い手となる優秀な人材を育てることを願っています。