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R4年度兵庫県科学賞受賞

森 康子 大学院医学研究科附属感染症センター臨床ウイルス学分野 教授

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新型コロナウイルス感染症制圧に向けた研究

未知のウイルスである新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)が突如発生し、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を引き起こし、世界中を恐怖に陥れた。この緊急事態に対処するため、新規ワクチンが急遽開発された。しかし、ウイルスの伝播力の上昇や宿主免疫回避が認められる変異株が次々と発生し、ワクチンや抗体医薬の効果が弱まった。 神戸大学大学院医学研究科森康子教授らの研究グループは、COVID-19 mRNAワクチンの3回(ブースター)接種は、原株(武漢株)と比較して多くの変異をもつオミクロン株に対する中和抗体産生を誘導することを明らかにした(JAMA Netw Open 2022)。ワクチン2回接種ではこの効果はほとんど認められず、COVID-19第6波の中心であるオミクロン株の伝播抑制にはワクチンの3回接種が重要であることの証明を国内で初めて示した。 また、欧州株(D614G)に感染した後、二回のmRNAワクチン接種を行った既感染者の血清中にも、オミクロン株に対する高い中和抗体が誘導されることを示した (J Infect Dis, 2022)。 そこで、高い中和抗体をもつワクチン接種歴のある既感染者の血液から変異株間で共通した部分を認識する中和抗体の探索を試み、今まで検出された変異株に加えてオミクロンBA.5株にも中和活性を示す広域中和抗体を見出し、そのエピトープを同定した。その結果、抗体がスパイクタンパク質の変異を有さない変異株間で高度に保存された領域を中心に認識している様子が明らかとなった。