GIST

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GISTとは

Gastrointestinal stromal tumor (消化管間葉系腫瘍)の略でジストと発音します。消化管のペースメーカー(動きを制御する)細胞であるカハールの介在細胞という特殊な細胞から発生した腫瘍のことです。
癌とは違いますが、癌に似たような悪性の経過をたどることがある病気です。
あとで詳しくふれますが、小さいものなら手術だけで治ることもありますが、場合によっては肝臓や肺に転移したり、手術したあとに分子標的治療薬という比較的新しい薬を長年にわたって服用することもあります。 このようにGISTといっても治療によって完全に治るものから生命を脅かすものまで幅が広い病気です。

疫学

毎年、人口10 万人あたり1~2人がかかる稀な病気です。発症部位は胃が最も多く、次いで小腸で、大腸及び他の消化管には比較的少ないといわれています。ちなみに胃癌は人口10万人あたり80~100人くらいがかかるといわれていますので、いかに少ない病気であるかがわかると思います。

症状

症状を伴うことはあまりありませんが、腫瘍が大きくなると通過障害をきたして食べ物が飲み込みにくくなったり、吐いてしまったりすることもあります。

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診断

内視鏡
胃や大腸のGISTでは、粘膜の下に埋まっている腫瘍によって粘膜がもりあがってみえます。そのため粘膜面には異常を認めないことが多いですが、ときにdelleといわれる中心部陥凹や潰瘍を有するものもあります。切開生検で確定診断を得られることもあります。
消化管透視
バリウムなどを用いる検査で、胃や大腸のどのあたりに腫瘍があるのかが分かります。
CT(computed tomography)
腫瘍の大きさや形態とともに周囲臓器との関係や遠隔転移の有無などの情報が得られます。内腔発育型、壁内発育型、壁外発育型などの発育形態のちがいが分かります。
超音波内視鏡(EUS:endoscopic ultrasound)
消化管壁内のどの層から発生しているかがわかります。
超音波内視鏡下穿刺吸引生検
(EUS-FNA:endoscopic ultrasound-fine needle aspiration)
超音波内視鏡をしながら腫瘍に針を刺して細胞を採取します。採取した細胞を顕微鏡で調べることで診断を得られる可能性があります。

GISTとまぎらわしい病気として、平滑筋腫・平滑筋肉腫・神経鞘腫・血管腫・脂肪腫・脂肪肉腫・悪性リンパ腫・カルチノイド・癌・転移性腫瘍・異所性膵などが挙げられます。
診断を確定するにはEUS-FNAや手術によって腫瘍の一部もしくは全部を取り出して、次項にあげた病理学検査をおこなうことが必要です。

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病理学検査

顕微鏡で腫瘍細胞を観察することでGISTかどうかを判断する最も重要な検査です。GISTの細胞のタイプ(組織型)には紡錘型細胞からなるもの、類上皮細胞からなるもの、両者からなるものの3種類があります。
通常の観察でも診断可能ですが、免疫染色という特殊な検査を追加します。KIT蛋白というGIST特有の成分が陽性であればGISTと診断できます。KIT蛋白が陰性でもCD34蛋白が陽性ならGISTと診断できます。

また、GISTの大部分においてc-kit遺伝子またはPDGFRA遺伝子という二つの変異が検出されます。
現在では、どちらの遺伝子のどの部位にどのような変異があるのかを調べる遺伝子変異検索がすすみ、変異部位によって治療薬の効きやすさや予後が異なるということが分かってきていています。
さらにわずかながらどちらの遺伝子にも変異も認めない特殊な群もあります。

リスク分類

腫瘍の大きさ、顕微鏡で観察して増殖が活発な腫瘍細胞の数(核分裂数)、どの臓器にできたものか、などによって病気の性格の悪さ(手術後に再発するリスク)を分類しています。
代表的なものを2つあげます。当科では現在はmodified-Fletcher分類を用いることが多いです。

Fletcher分類

腫瘍の大きさと核分裂数から判断する方法です。

腫瘍径(cm) 核分裂数(/50HPF)
超低リスク <2 <5
低リスク 2-5 <5
中間リスク <5
5-10
6-10
<5
高リスク >5
>10
Any size
>5
Any mitotic rate
>10
NIH(the National Institutes of Health) consensus classification criteria。簡単で広く用いられている。
Fletcher CDM et al. Hum Pathol 2002;33:459-465

modified-Fletcher分類

腫瘍の大きさと核分裂数、原発臓器、腫瘍が破裂したかどうか、から判断する方法です。

腫瘍径(cm) 核分裂数(/50HPF) 臓器
超低リスク ≦2 ≦5 Any
低リスク 2.1-5.0 ≦5 Any
中間リスク ≦5 6-10
5.1-10.0 ≦5
高リスク Any Any 腫瘍破裂
>10.0 Any Any
Any >10 Any
>5.0 >5 Any
≦5 >5 胃以外
5.1-10.0 ≦5 胃以外
臓器と腫瘍破裂を考慮することで、高リスク群とその他の群での再発率が大きく異なるような分類となっている。術後治療の対象を判断するのに有用な分類。
Joensuu H, Hum. Pathol . 2008;39: 1411-1419
現在では腫瘍径と核分裂数、原発臓器、腫瘍破裂の有無などから術後10年以内の再発率についておおよそ判定できるmapが作られていて、そのmapと照らし合わせれば個々の患者さんについておおよその再発率がわかります。
Joensuu H, Lancet Oncol 2012;13:265-274

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治療

GISTと診断された時点で治療対象となります。切除可能であれば手術、切除不能であれば分子標的治療薬による治療が選択されます。
詳しくはGIST研究会のHPに「GIST診療ガイドライン」が掲載されていますのでそちらを参照して下さい。

手術

できるだけ臓器を残すことを考慮した局所切除が原則です。周囲リンパ節に転移することは稀で、胃癌のようなリンパ節郭清は必要ないとされています。
ただし、部位や大きさによってはより広範囲の切除が必要になったり、切離や切除後の縫合に工夫が必要になることがあります。例えば胃GISTでは幽門(出口)近くの場合には幽門側胃切除術、噴門(入口)近くでは噴門側胃切除術、後壁では前壁切開や胃内手術(胃の内側からの手術)が必要となることがあります。

当科では、

【腫瘍が小さく、切除や縫合が困難な部位でなければ】
→ 腹腔鏡手術または単孔式腹腔鏡手術
【腫瘍が大きい、または切除や縫合が困難な部位であれば】
→ 開腹手術

腹腔鏡手術の実際

腹腔鏡手術の実際
胃の噴門(入口)の近くに胃の外に突出するような GISTを認めます。

腹腔鏡手術の実際
胃壁全層を切開します。
GISTの周りをすべて切開して摘出します。

腹腔鏡手術の実際
できあがりの様子です。
術中に胃内視鏡をおこなって、きちんと閉鎖できていること、強い変形や狭窄がないことを確認しています。

こちらは別の症例ですが、術前と術後の内視鏡の比較です。

術前(胃内視鏡)術後(胃内視鏡)
胃内視鏡 術後胃内視鏡

このように噴門(胃の入口)に近いGISTですが、大きく変形することなく切除できています。
この程度であれば術後にはほとんど以前と変わらない食生活を送ることができる可能性があります。
ただし、胃の1/2~2/3を切除した場合には胃癌の術後と同様に食生活は大きく変化します。症状については個人差がありますので、疑問がありましたら主治医にご相談下さい。

分子標的治療薬

細胞表面に発現している特定の分子を標的とする薬剤です。イマチニブ(Imatinib)、スニチニブ(Sunitinib)、レゴラフェニブ(Regorafenib)などがGIST治療に用いられています。
切除不能の場合以外にも完全切除できなかった場合、ハイリスクであった場合、再発や転移した場合などに投与を考慮します。
当科ではこのような場合には腫瘍内科と連携して分子標的治療を行っております。

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フォローアップ

手術が終わって経過がよければ退院となりますが、その後も分子標的治療薬を投与することになった人はもちろん、そうでない人も定期的な検査を受ける必要があります。
切除した部位に再発しないか、新たに肝臓や他の臓器に転移が出現していないかなどを判断するために、血液検査やレントゲン検査・内視鏡検査・CT検査などをおこないます。
検査や通院の間隔はどのリスク群に属するかなどで異なりますので詳しいことは担当医にお尋ね下さい。
GISTは長期間経過した後に再発することもあるので、ハイリスク群などでは胃癌や大腸癌(フォローアップ期間は5年間とされています)よりも長期にわたってのフォローアップを行っています。

実際にGISTが疑われたら

  • まず診断の項目にあげたような検査を行います。
    →GISTと判明したら治療を考えます。それ以外の病気であればそれぞれに見合った治療について相談します。
  • GISTであった場合は、転移がなくて切除できそうだったら手術を選択、転移があったり切除できそうになければ分子標的治療薬を選択します。
  • 手術を選択したら、手術に耐えうるかどうかの検査を行います。手術に耐えうることが判明したら手術日が決まるのを待ちます。(その時の手術予約の混み具合によって手術待ちの期間は様々です)
    分子標的治療薬を選択したら、腫瘍内科の先生と相談して治療の段取りを決めます。
  • 手術日が決まれば数日前に入院して必要に応じて再検査や検査の追加を行います。
  • 手術後は経過がよければ1-2週間で退院となります。合併症が起これば入院期間は延長することがあります。
  • その後は外来に通院となります。病理学検査の結果が判明したらリスク分類に照らし合わせて分子標的治療薬を服用するかどうかを相談します。
  • 経過観察であれば、定期的に外来に通院して再発や転移がないかをチェックします。分子標的治療薬を選択するなら、腫瘍内科の先生と相談して治療の段取りを決めます。
【 注意 】
なおここにあげた検査・治療・経過は代表的なものでおおよその目安と考えてください。必ずしもGIST患者さん全員がこの通りになる訳ではありません。
また、GIST研究会のHP内などに掲載しているGIST診療ガイドラインは現在おおよそ同意が得られている診断や治療の方針を示したものであり、絶対その通りにしなければならないという性格のものではありません。
持病のあるなし、年齢、体力、病気の状態などによって治療方針はそれぞれ異なります。
ご自身の治療方針については必ず担当の主治医にお尋ね下さい。

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神戸大学大学院医学研究科外科学講座 食道胃腸外科学分野
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