診療内容

中枢神経疾患

脳および脊髄は中枢神経と呼ばれ、複雑なネットワークにより人間の様々な活動をコントロールしています。中枢神経に発生する疾患はしばしば後遺症が残ったり、難治性であることが多く、正しく診断・治療がされないと生活の質を低下させることにつながります。一方で脳や脊髄は直接組織を調べること(生検といいます)が難しく、診断には詳細な診察や複数の検査が必要となります。当科では質の高い画像検査や生理検査を組み合わせることで正確な診断を行い、最先端の治療を提供するとともに、社会的な制度の利用など日常生活の支援も行っていきます。

脳梗塞

脳梗塞は脳の血管が詰まる病気で手足の動きが悪くなったり、体の感覚が鈍くなったり、言葉がしゃべりづらくなる等の症状が起こり機能障害を残す場合があります。脳梗塞の予防には普段から高血圧、高コレステロール血症、糖尿病、心房細動、肥満、喫煙などのリスク因子の管理が重要になります。一方で脳梗塞を発症しても症状が出現して4.5時間以内なら、t-PAという血の塊(血栓)を溶かす薬を注射して後遺症を少なくすることができる場合があり、積極的に適応を検討し血栓溶解療法を行っています。同時に、詰まった血管を再開通させる血栓回収療法が可能な患者さんでは、速やかに脳神経外科と連携を取り最新の治療を提供しています。これらの治療ができない場合でも頭部MRIや頸動脈超音波検査などを用いて脳梗塞の原因を評価し、後遺症を最小限にするための積極的な内科治療とリハビリを行い、必要に応じてシームレスなリハビリ病棟への転院を心がけています。

てんかん

けいれんや意識減損発作を主訴とする患者さんでは、詳細な病歴聴取と脳波、超高磁場MRI検査などから、失神や脳卒中との鑑別を含めて診断を的確に行います。てんかんと診断された場合には、病因・病型や併存疾患から、適切な抗てんかん薬を選択し治療を行います。超高齢社会で増加している高齢発症のてんかんでは、原因疾患を精査し、薬剤調整を適切に行い発作の抑制をめざしています。薬剤抵抗性の難治の患者さんでは、自己免疫性てんかんの可能性やてんかん外科手術の適応評価のために、必要に応じて入院いただき、長時間ビデオ脳波モニタリング、画像検査(MRI、FDG-PET)、心理検査や薬剤調整などを行います。けいれん重積や非けいれん性重積(意識障害の遷延化)の患者さんは、関連診療科と連携して、脳波モニタリングのもと、迅速に集学的な治療を行っています。

認知症

認知症はものごとを記憶する、判断する、会話をするなどの機能が進行性に低下し、日常生活や社会生活に支障をきたす状態になったことを指します。認知症の代表的な病気としてアルツハイマー型認知症、血管性認知症、レビー小体型認知症がありますが、それ以外に甲状腺疾患やビタミン欠乏、脳炎などが認知症の原因である事もあります。当院では平成21年から認知症疾患医療センターが開設され精神神経科と協力して専門外来(メモリークリニック)を行っており、早期発見・早期治療を目指した鑑別疾患、専門医療の相談、かかりつけ医との連携を行い、積極的に認知症の診療に取り組んでいます。また臨床研究推進センターと密接な連携し、認知症の根本治療薬や予防法の臨床研究も行っています。

多発性硬化症

多発性硬化症(MS)は中枢神経系の白質(オリゴデンドロサイト)を標的とした自己免疫疾患です。発症が若年で神経障害の進行が人生の壮年期と重なるため、患者さん・ご家族の生活への負担が大きいことが問題です。早期からの治療導入がその後の経過を改善することが知られている一方で、類似疾患である視神経脊髄炎(NMOSD)とはその病態や治療方針が異なり、正確な診断と適切な治療が重要になります。当科では正確な診断はもとより、臨床症状、画像所見、高次脳機能検査など多角的な病勢評価によって治療方針を決定します。症状に応じた外来および入院でのステロイドパルスや血漿交換療法などの急性期治療を行い、MSではグラチラマー酢酸塩、インターフェロンβ、フマル酸ジメチル、フィンゴリモド、ナタリズマブなどの疾患修飾薬を、またNMOSDではステロイドや免疫抑制剤を用いた再発予防治療を行っています。

パーキンソン病関連疾患

パーキンソン病は神経変性疾患の中では有病率が高く、高齢化社会に伴ってわが国での患者数も増加傾向にあります。またパーキンソン病とよく似た症状を呈するパーキンソン症候群には脳血管障害、薬剤性、神経変性疾患など様々な原因があります。当科では神経学的診察や各種画像検査を組み合わせて正確な診断を行い、患者さん一人一人の症状に合わせた投薬治療、生活指導などを行っています。主に外来での診療となりますが、初発の場合や診断未確定の場合、投薬調整が必要な場合などは入院して頂くこともあります。深部脳刺激療法(DBS)、レボドパ・カルビドパ配合経腸用液療法(LCIG)などの機器(デバイス)を用いた治療法:device-aided therapyも他診療科と連携の上で行っています。

脊髄小脳変性症・多系統萎縮症

脊髄小脳変性症は大きく遺伝性と孤発性に分けられ、孤発性の中には多系統萎縮症やその他の病型があります。神経学的診察にくわえて画像検査、自律神経機能検査などを行い、遺伝性が疑われる場合は遺伝子診断も行って病型を特定します。状況に応じてプロチレリン点滴、タルチレリン内服、その他の症状に応じた対症療法を行っています。多系統萎縮症で病状の進行した場合には患者さん、ご家族と治療方針を相談した上で、胃瘻造設(PEG)や非侵襲的陽圧呼吸(NPPV)、気管切開などの治療法を検討いたします。
※現在のところ他施設からの遺伝子検査は受け付けておりません。

神経筋疾患

筋力低下やしびれ感の原因が,脳ではなく末梢神経や筋肉にある場合,まとめて神経筋疾患と呼ばれます.我が国ではMRIは普及していますが,神経筋疾患の診断に重要な筋電図検査が普及しておらず,診断が遅れる傾向にあります.当科では筋電図検査以外に超音波検査も組み合わせて,正確な診断に努めています.

重症筋無力症

重症筋無力症は胸腺由来の細胞によって病原性自己抗体である抗アセチルコリン受容体抗体などが産生され神経筋接合部に作用することで筋力低下や疲労現象を起こします。胸腺の異常が発見された場合には呼吸器外科と協力して治療を行います。診断には自己抗体の測定に加えて反復刺激試験などの電気生理検査を行います。治療に関してはステロイドや免疫抑制剤に加えて免疫グロブリン製剤、血漿交換療法などを積極的に用いた早期強化療法を基本としており、より副作用の少ない寛解状態を目指します。

筋萎縮性側索硬化症

神経筋疾患のなかには運動ニューロンのみが侵される疾患があり、そのうちの一つが筋萎縮性側索硬化症(ALS)です。他疾患ではないことの証明が診断に必要なため多くの検査を行います。診断後は病状に合わせた治療と、疾患修飾治療(エダラボン、リルゾール)を行います。

脊髄性筋萎縮症

運動ニューロン疾患の中には幼少期から症状がある病型もあり、そのうちの一つが脊髄性筋萎縮症(SMA)です。近年アンチセンス核酸医薬品(ヌシネルセン)が保険診療として認可され、当院では成人型SMAにおいても積極的に治療を行っています。

ギランバレー症候群やCIDPなどの免疫介在性ニューロパチー

初回治療は免疫グロブリン大量静注療法(IVIg)を行うことが多いですが、病型に応じてステロイドや免疫抑制剤の併用、血液浄化療法なども選択されます。慢性期の維持療法としてIVIgやSCIg(皮下注射)を使用する場合もあります。

筋炎・ミオパチー

筋力低下の原因が筋そのものの異常にある場合、筋炎か、その他のミオパチーかの鑑別をする必要があります。原則、筋生検や遺伝子検査を行って確定診断をします。筋炎と判明した場合は、膠原病リウマチ内科と協力して治療していきます。
※現在のところ他施設からの筋病理診断は受け付けておりません。

各種疾患の治験にも取り組んでいます。詳細はページ下部よりメールにてお問い合わせください。

診療実績

2018年度の診療実績は以下の通りです。

外来患者数

患者数 月あたりの患者数
初診(地域紹介) 563 46.9
初診(院内紹介) 290 24.1
入院中外来 375 31.3
再診(のべ人数) 13446 1120.5

単位:人

新入院患者数

2018年 2019年 合計
4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月
36 30 36 32 38 28 39 32 26 37 24 39 397

単位:人

新入院患者数の内訳(単位:人)

「その他」はてんかん、感染症、代謝性疾患などを含みます。