分子代謝医学
神戸大学大学院 医学系研究科
Division of Molecular and Metabolic Medicine
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研究内容詳細

4)メタボロミクスおよびプロテオミクスによる糖尿病研究

[1] 新規アディポカインの同定
 最近、私達は生命活動の実行部隊であるプロテオームを解析対象とするプロテオミクスを用いたアプローチにより、新規アディポカインPGRN(プログラニュリン)の同定に成功しました。PGRNは主に脂肪細胞から分泌され、高脂肪食による肥満やインスリン抵抗性に関与します。このようなPGRNの作用発現にはIL-6を介するシグナル経路が関わることも明らかにしました(Matsubara et al., Cell Metab, 2012)
[2] インスリン分泌の鍵となる新たな代謝シグナルの解明
  食事摂取に応じて腸管から分泌されるインクレチン(GLP-1およびGIP)は膵β細胞に作用し、cAMPシグナルを介してグルコース濃度依存性にインスリン分泌を増強します。インクレチン/cAMPシグナルはPKAおよびEpac2Aを介して作用しますが、そのグルコース依存性の作用メカニズムは不明でした。私達はインスリン分泌機構の研究に有用となる新たな膵β細胞株の樹立に取り組み、インクレチンに応答する膵β細胞株MIN6-K8とインクレチンに応答しない細胞株MIN6-K20を確立しました(Iwasaki et al., J Diabetes Investig, 2010)。最近、これらの細胞株を用いた比較メタボローム解析により、グルコース依存性にリンゴ酸−アスパラギン酸シャトルを介して産生される膵β細胞内のグルタミン酸がインクレチンによるインスリン分泌の鍵となるシグナルであることを発見しました(Gheni et al., Cell Rep, 2014)。この発見は、長年不明であったcAMPシグナルによるインスリン分泌メカニズムの解明につながる学術的なインパクトのみならず糖尿病の病態の解明や新たな治療法の開発に寄与すると考えられます。今後もメタボロミクスの手法を用いた研究を推進することにより、インスリン分泌に不可欠な新規代謝シグナルが発見され、細胞内代謝という新しい視点からインスリン分泌制御機構が解明されると同時に新たな治療戦略が確立されることが期待されます。
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[3] 糖尿病バイオマーカーの同定
 現在、糖尿病や耐糖能異常の診断には、血糖値やHbA1cなど血糖に依存した指標が用いられています。糖尿病を超早期に診断するためには、血糖上昇前のごく初期の代謝異常を鋭敏に捉える新たなバイオマーカーが必要です。私達は、糖尿病の早期診断や病態評価に有用なバイオマーカーの同定を目的として、ヒト(正常、境界型、糖尿病)および自然発症の糖尿病モデルから採取した血液や臓器のサンプルを用いたメタボローム解析を行っています。

 最近、日本人を含むアジア人に多いインスリン分泌不全型糖尿病のモデルであるSpontaneously Diabetic Torii(SDT)ラットを用いた経時的メタボローム解析により、糖尿病発症前から血中のトリプトファンおよびその代謝物が低値を示すことを見出しました(Yokoi et al., Metabolomics, in press)。また、これまでに正常、境界型、糖尿病について正確に診断された合計1,000例以上の血液(血漿・血清)サンプルを収集し、これらのサンプルを用いたメタボローム解析により、5つの代謝物が空腹時血糖値と相関することを見出しています。血糖値やHbA1c以外の全く新しい糖尿病バイオマーカーが同定される可能性があり、糖尿病の発症予防や病態診断のブレイクスルーとなるだけでなく、糖尿病の新たな治療標的となるものと期待されます。
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