分子代謝医学
神戸大学大学院 医学系研究科
Division of Molecular and Metabolic Medicine
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研究内容詳細

3)遺伝子改変動物を用いた糖代謝制御機構の解明

[1] Kir6.2遺伝子改変マウス
 ATP感受性K+(KATP)チャネルは多くの細胞で膜電位の維持に関与する重要な分子 で、膵β細胞では、糖尿病の治療に広く用いられるスルホニル尿素(SU)薬の受容体であるSUR1サブユニットと、カリウムイオンを透過するチャネルポアを形成するKir6.2サブユニットから構成されています。私たちは1995年に世界で初めてKir6.2のクローニングに成功し、膵β細胞KATPチャネルの分子構造を解明しました(Inagaki et al., Science, 1995)
その後、Kir6.2のドミナントネガティブ変異体(Kir6.2G132S)を膵β細胞で特異的に発現するトランスジェニックマウスを作製し、KATPチャネルがグルコース応答性インスリン分泌に必須の分子であることを示しました(Miki et al., PNAS, 1997)。KATPチャネルのグルコース応答性インスリン分泌における重要性はKir6.2ノックアウトマウスを用いた解析によってさらに確実なものとなりました(Miki et al., PNAS, 1998)
一方で、KATPチャネルは膵β細胞以外にも発現しており、筋肉ではグルコースの取り込みに関与し(Miki et al., AJP, 2002; Minami et al., AJP, 2003)、視床下部ではグルコース受容性ニューロンにおけるグルコースセンシングに重要であることを明らかにしました(Miki et al., Nat Neurosci, 2001)。このように、Kir6.2遺伝子改変マウスを用いた一連の研究から、KATPチャネルは様々な組織に発現して生体のグルコースホメオスタシスの維持に必須であることが明らかとなりました。
[2] Noc2ノックアウトマウス
 私たちの研究室では、膵β細胞で発現する分泌関連分子であるNoc2を同定しました(Kotake et al., JBC, 1997)。その生理的役割を明らかにする目的でNoc2欠損マウスを作製したところ、野生型には見られないストレス負荷時の耐糖能障害とインスリン反応の低下が認められました。
 さらに、Noc2欠損マウスの膵β細胞においてはインスリン分泌の障害とGi/oシグナルに対する感受性の亢進が認められました(Matsumoto et al., PNAS, 2004)。 ストレス時には自律神経系を介してインスリン分泌が抑制されることが知られていますが、Noc2はストレス時インスリン分泌を正常に維持することにより、 高血糖の招来や耐糖能障害を防御していると考えられます。このように、Noc2欠損マウスはストレス誘導性高血糖の解明に有用なモデルマウスです。
[3] Dmbx1ノックアウトマウス
 私たちの研究室では、膵β細胞株から新規ホメオドメイン型転写因子であるDmbx1を同定し(Zhang et al., JBC, 2002)、その生理的な役割を明らかにする目的でDmbx1欠損マウスの作製・解析を行いました。
Dmbx1欠損マウスと糖尿病と肥満を発症するagouti-yellow(Ay/a)マウスを交配したマウスにおいて糖尿病と肥満が抑制 されたことから、肥満や糖尿病の発症に寄与するagouti related protein(AGRP)の作用発現にDmbx1の作用が必要であることが明らかになりました(Fujimoto et al., PNAS, 2007)。膵β細胞におけるDmbx1の役割は現時点では不明ですが、全身の糖代謝制御に関わる新たな転写因子を同定したことは極めて重要な成果であると言えます。
[4] Epac2ノックアウトマウス
 Epac2 (cAMP-GEFII)は、Protein kinase A (PKA)とは独立したcAMPセンサー分子として同定され、GLP-1やGIPなどのインクレチンによるインスリン分泌増強において、cAMP依存性かつPKA非依存性経路の中核となる分子です(Ozaki et al., Nat Cell Biol, 2000; Kashima et al., JBC, 2001)
Epac2ノックアウトマウスの個体レベルでの解析は現在進行中です。インスリン分泌におけるEpac2の役割の詳細は1) 膵β細胞におけるインスリン分泌機構の解明をご覧ください。
[5] Rim2αノックアウトマウス
 私たちは以前Epac2と相互作用する分子として、低分子量Gタンパク質Rab3の標的分子Rim1のアイソフォームRim2αを同定しました(Ozaki et al., Nat Cell Biol, 2000)
Rim2α欠損マウスの膵β細胞の解析から、Rim2αはRab3やMunc13-1と相互作用することで、インスリン開口分泌におけるインスリン顆粒のドッキングとプライミングを決める分子であることが明かになりました(Yasuda et al., Cell Metab, 2010)
また興味深いことに、インスリン開口分泌において、インスリン顆粒の細胞膜へのドッキングは必須な過程でなく、むしろインスリン顆粒の膜融合を抑制する過程であることが示されました。この結果はグルコース応答性インスリン分泌の第1相、第2相はともに、ほとんどがRestless newcomer、つまりインスリン顆粒は刺激後、細胞内から細胞膜へリクルートされ、ドッキングすることなく細胞膜に融合する、という私たちの以前の結果と一致しています。
また、インクレチンホルモンであるGIP (Glucose-dependent insulinotropic polypeptide)、成長ホルモン、アドレナリンの分泌がRim2α欠損マウスでは障害されていました。 以上の結果から、Rim2αはインスリン分泌における鍵となる分子であるとともに、糖恒常性に関与するホルモンの正常な分泌にも重要であることが明らかになりました。
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