分子代謝医学
神戸大学大学院 医学系研究科
Division of Molecular and Metabolic Medicine
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研究内容詳細

2)膵β細胞の分化・再生機構の解明

[1] in vitroにおける膵β細胞再生とそのメカニズムの解明
JBC, 200 私たちは膵組織から様々な方法で幹(前駆)細胞を同定しようと試みています。その過程で、成体マウスの膵外分泌細胞から膵β細胞に類似したインスリン分泌細胞が誘導できることを発見しました。Cre-loxPシステムを応用したcell lineage tracing法により、新たに誘導されたインスリン分泌細胞の起源が膵腺房細胞であることを世界で初めて直接的に証明しました(Minami et al., PNAS, 2005; Okuno et al., AJP, 2007)

また、この際に膵腺房細胞は、まず脱分化の状態を経て前駆細胞様の細胞に変化し、次にインスリン分泌細胞へ再分化するという分化転換のモデルを提唱し、膵腺房細胞がインスリン分泌細胞へ分化転換するときには、カドヘリン依存性細胞間接着の破壊と再構成が重要であることを見出しました(Minami et al., JBC, 2008)
さらに、ヒトの膵外分泌組織からインスリン分泌細胞が誘導できることを報告し、膵外分泌組織が再生β細胞のソースとして有用であることを示しています(Minami et al., JDI, 2011)

 最近、再生膵β細胞の移植治療への適用を見据えて膵外分泌細胞からiPS細胞を樹立し、線維芽細胞に由来するiPS細胞との比較メタボローム解析および分化能の解析を行いました。その結果、両細胞間で代謝プロファイルと自律的分化能が異なることを見出し、これらの相違には由来細胞のエピジェネティックメモリーが関与する可能性を示しました(Nukaya et al., Genes Cells, in press)。iPS細胞から膵β細胞への効率的な分化を実現するために考慮すべき重要な知見です。
[2] in vivoにおける膵β細胞再生と前駆候補細胞の同定
 私たちの研究室では、膵β細胞におけるATP感受性K+チャネルのサブユニットであるKir6.2のドミナントネガティブ変異体(Kir6.2G132S)を発現するトランスジェニックマウスが糖尿病を発症することは既に報告していました(Miki et al., PNAS, 1997)
ところが、このマウスが高週齢に達すると血糖値がほぼ正常化することを偶然に発見し、組織学的検討など詳細な解析を行った結果、このマウスでは自然に膵β細胞が再生することを突き止めました。興味深いことに、膵β細胞再生時には、膵島内に通常は存在しないDolichos biflorus agglutinin (DBA)に結合性を有する細胞が出現することを見出し、DBA結合性細胞がin vivoにおける前駆細胞である可能性を示しました(Oyama et al., Diabetes, 2006)
現在までin vivo における膵β細胞再生の良いモデルはほとんど報告されておらず、Kir6.2G132Sトランスジェニックマウスはin vivo における膵β細胞再生機構の解明と前駆細胞の同定に極めて有用なマウスであると考えられます。
[3] 誘導性Cre/loxPシステムを用いた膵β細胞の運命追跡
 私たちは、膵β細胞を任意のタイミングで選択的に標識できるマウス(Ins2-CreER/R26R-YFPマウス)を開発し、様々な条件で膵β細胞を標識してその運命を追跡しています。出生直後には膵β細胞量が増加しますが、その大部分は増殖(膵β細胞の細胞分裂)によって説明されてきました。私たちはこのマウスを用いて、離乳期前後には膵β細胞が増殖以外にも、まったく別の細胞から新しく生じる(新生する)ことを見出しました(Nakamura et al., Biomed Res, 2011)

 最近、このマウスを用いた解析から、糖尿病治療薬として使用されているGLP-1受容体作動薬(リラグルチド)が糖尿病状態でダメージを受けた膵β細胞機能を正常化するとともに、その増殖を促進し細胞死を抑制するという知見を得ました(論文投稿中)。現在、GLP-1受容体作動薬の機能発現に関与する代謝シグナルについて解析を進めています。細胞代謝というこれまで全く考慮されていない点から膵β細胞の分化・再生を理解できる可能性があり、β細胞の質的改善のみならず、β細胞そのものを増やすという糖尿病の新規な再生治療に結びつくことが期待されます。
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