小児科診療案内
小児科診療案内

診療科長挨拶




小児科学分野 教授 野津 寛大
令和3年6月1日付で小児科学分野教授を拝命いたしました野津寛大と申します。
私は神戸生まれ、神戸育ち、神戸大学出身で、これまでの人生で神戸を離れたのは高槻病院勤務の2年間、姫路赤十字病院勤務の2年間およびウィスコンシンでの留学期間の3年間のみです。大学受験で神戸大学を選択する際も、神戸を離れたくない一心で受験勉強に励んでおりました。このように生粋の神戸人である私が、心から愛する母校の教授を拝命したことは本当に感慨深く、運命的なものを感じるとともに、神戸大学、神戸市、兵庫県の小児医療のために誠心誠意、全力を尽くして参ろうと、あらためて強く心に誓う次第です。

私はこれまで神戸大学小児科におきまして、3名の教授の下で働かせていだきました。
2001年に初めて大学で働き始めた際は中村肇先生が教授でいらっしゃいました。中村先生は私にとって雲の上の存在で、学生時代もたくさんの授業を受けて小児科学を学び、小児科医になる決心をさせてくださったのが中村先生でした。そのため、小児科の教授と言えば中村先生といったイメージが今でも染みついております。言わずと知れた新生児医療のパイオニアで、新生児黄疸研究の世界的権威でいらっしゃいます。高槻病院、姫路赤十字病院で働いていた際も中村先生の書かれた教科書をバイブルのように大切にしながら新生児診療の研修を行っていたのを今でも昨日のことのように鮮明に覚えております。

2人目が松尾雅文先生です。世界中で大注目され、次々と新薬が開発されている「核酸医薬」の生みの親です。その成果が高く評価され、2021年の小児科学会賞を受賞されました。私にとりましては人生を変えてくださった恩師の一人で、私を腎臓グループの主任としてご採用くださり、また、遺伝学的研究のノウハウを私にたたき込んでくださいました。私たちは現在、遺伝性腎疾患であるアルポート症候群に対する核酸医薬を用いたエクソンスキッピング療法の開発を行っておりますが、この治療法の概念は松尾先生が実に1980年代に編み出されたものであるということに、改めて松尾先生の偉大さを強く感じさせられます。

3人目が、私にとって最大の恩師でいらっしゃる飯島一誠先生です。私を小児腎臓学の世界に誘ってくださりました。飯島先生は臨床研究、基礎研究ともに能力を存分に発揮してこられました。特に臨床研究におきましては特発性ネフローゼ症候群の治療開発をはじめ、次々と難しい臨床試験を成功させ、新しいエビデンスの確立を成し遂げられました。中でも難治性ネフローゼ症候群に対するリツキシマブを用いた治療法の開発では、世界で初めてその有効性の証明に成功し、この研究をきっかけに、今やリツキシマブは全世界で標準治療となり、たくさんの難治性ネフローゼ症候群患者を救う結果となっております。

この私がお仕えした3名の先生方のご功績は、まだまだ書き足りないところがございます。しかしこれだけでも、神戸大学の小児科学教室がいかに日本および世界の小児医療の発展に貢献してきたかが存分に伝わると思います。 このような諸先輩方の素晴らしいご功績および神戸大学小児科の発展を目の当たりにしてきました私にとって、この大役を引き継ぐことを仰せつかりこの上なく光栄です。また、この大好きな小児科学教室をさらなる高みへと引き上げることに、大いなるやりがいを感じております。

幸いにも私には、これまでたくさんご指導いただいた関連病院諸先生方、一緒に働いた同僚、後輩の先生方、同門の先生方、地方会、兵庫県小児科医会関連でお世話になってきた先生方など、すぐ近くにたくさんの仲間がおり、非常に心強いメンバーに囲まれた幸せな環境におります。小児医療を取り巻く環境は現在困難を極めておりますが、皆で一丸となって、この難しい時代を乗り越え、すべての方々により幸せを感じていただけますよう努めて参ります。「こどもたちのために、英知を結集し、熱い心で、全力で立ち向かう!」というモットーを掲げさせていただきました。兵庫県の小児医療の発展、後進の育成、世界に誇れる研究成果の排出に全力で取り組んで参りますので、今後とも引き続きご指導、ご鞭撻の程、どうぞよろしくお願いいたします。


学生・初期研修医の先生方へのメッセージ
近年、医療が高度に細分化される中、小児科だけは常に全身を診ることが求められます。またそれだけでなく、対象年齢も、新生児から思春期、さらには小児期発症の疾患は成人後も診ることが求められることも多々あります。それだけに小児科学は守備範囲が広く、大変にやりがいの感じられる分野となっておりますし、臨床経験を積んだその後からサブスペシャリティをゆっくり選択できるという特権もあります。神戸大学小児科研修プログラムは、地域の中核病院における小児一般診療、新生児診療、小児救急医療、大学病院での希少疾患診療、さらには地域医療と、小児科学のすべてを効率よく研修できる大人気のプログラムとなっておりますので、これから小児科研修プログラムの選択をされる先生方は是非ご一報いただければと存じます。


専攻医・若手医師の先生方へのメッセージ
すべての疾患には遺伝学的因子と環境的因子がある程度関与しております。小児科の扱う疾患はそのほとんどで遺伝学的因子が強く関わっており、一方で様々な要素がある環境的因子の関与は非常に弱いという特徴があります。つまり、小児の疾患はかなり均一で、一つの治療法に対してほぼ同等の反応性を示します。そのため、これまで治療法のなかった小児期発症の難治性疾患におきましては新規の治療法の開発の視点からはネタの宝庫と言えます。その開発の手段が臨床研究(主に臨床試験)と基礎研究(臨床に結びつく研究をトランスレーショナルリサーチと呼びます)です。私たち神戸大学の小児科におきましてはこの両軸において、常にバランス良く研究を進め、世界に誇れる成果を多数上げてきましたし、今後も走り続けます。
先生方には今後、サブスペシャリティを身につけて専門医として診療を行うことや、研究で世界に挑戦するという魅力的な選択肢があります。能力にあふれ、やる気のある、若い先生方が、高水準のサブスペシャリティ教育を受けたり、研究の成果を着実に出したりする最も近道は、そのノウハウをすでに有している指導者のもとで学ぶことです。私たち神戸大学の小児科学教室はそのノウハウをすでに蓄積しており、また、私たちは若手医師の活躍の場を作ることに大きな喜びを感じております。先生方には是非とも長い人生において、サブスペシャリティの獲得および研究を行うことに一定期間を費やしてほしいと切に感じております。それがその後の先生方の小児科医としての人生に大きく影響を与えることを私が保証します。一緒に大学で働きましょう!どうぞよろしくお願いいたします。
 
このページの先頭へ