第27回 吉馴学術記念講演会プログラム

日 時  平成14年7月27日(土) PM 2:00〜4:30

       会 場  神戸大学医学部「神緑会館」
     (078) 382-6090
 
本講演会は、日本小児科学会認定医のための研修
8単位、並びに日医生涯教育講座3単位です。
主 催  日本小児科学会兵庫県地方会
後 援  兵 庫 県 医 師 会
     神 戸 市 医 師 会
テーマ 「小 児 医 療 の 進 歩」
1.(PM2:00〜3:00)
    座長  神戸大学大学院医学系研究科国際環境医科学講座遺伝病統御学
                        教授 松 尾 雅 文
小児最近感染症の新しい動向
        
    神戸市立中央市民病院感染症科部長兼小児科参事 春 田 恒 和

 

2.(PM3:10〜4:40)
    座長  神戸大学大学院医学系研究科成育医学講座
                    小児科学教授 中 村   肇
小児医療から成育医療へ
              国立成育医療センター院長    柳 澤 正 義

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講演1
  小児細菌感染症の新しい動向
 

      神戸市立中央市民病院 感染症科部長兼小児科参事

春 田 恒 和

 

 前世紀後半、抗菌薬の発展はめざましく、多くの子供がその恩恵に与ったことは周知の事実である。しかしながら一方では耐性菌が出現し新たな問題を生じている。古くはペニシリン耐性黄色ブドウ球菌、マクロライド耐性溶連菌が問題となり、その後アンピシリン耐性インフルエンザ菌、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌が診療上避けられない事態となった。さらに近年では小児科領域で起炎菌として多く分離される肺炎球菌、インフルエンザ菌について新たな耐性化が危惧される状況となっている。この両菌種は肺炎、中耳炎にとどまらず重篤な化膿性髄膜炎、敗血症の起炎菌としても重要である。本日はこれらのペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)、β−ラクタマーゼ非産性アンピシリン耐性インフルエンザ菌(BLNAR)の細菌の状況を中心に講演する予定である。

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講演2
  小児医療から成育医療へ
 

        国立成育医療センター 病院長  柳 澤 正 義

 

 少子化が急激に進行し、疾病構造が大きく変化し、子ども達の心と行動の問題が深刻になるとともに、小児医療も従来の枠から踏み出さざるを得ない状況となってきた。現在の医療保険制度における小児医療の不採算性から病院小児科が危機的状況にあり、また、小児救急医療も破綻に瀕している。小児医療は転換の方向を摸索しており、「小児医療から成育医療へ」ということも方向の一つである。

 そのような状況の中で、平成14年3月1日、わが国で5番目のナショナルセンターとして国立成育医療センターが開院した。新センターでは、小児医療、母性・周産期医療に加えて、生殖医療、胎児医療、思春期医療、小児慢性疾患をもつ成人患者の医療まで幅広く包括的・継続的な医療が行われる。

 現在、多くの人が抱いている「成育医療」の概念は、ライフサイクルとして捉えた医療体系、すなわち、受精卵から出発して胎児、新生児、乳児、幼児、学童、思春期を経て、生殖世代となって次世代を生み出すというサイクルにおける心身の病態を包括的に診る医療ということである。医学・医療の進歩、高度化とともに専門分化が進行してきたが、近年、統合・総合ということが求められ、患者を全人的・包括的に診ることの重要性が強調されている。救急医療も含めて小児総合医療が重視されるべきであり、成育医療の概念の中には、そのような考え方も包含されている。「成育」あるいは「成育医療」という言葉は、従来、医学・医療の領域であまりなじみのないものであったが、次第に広く認知され、今後さらに普及していくものと思われる。「成育医療」の理念とそれを先導する国立成育医療センターが、21世紀初頭に当ってわが国の小児医療を転回させ前進させる推進力となることを期待されている。

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