テーマ :小児救急医療の現況と将来展

1.小児一次救急センターの立場から(14:00~15:00)阪神北広域救急医療財団

阪神北広域こども急病センター センター山 﨑 武 

座 長 兵庫県立こども病院副院長 兼 小児救急医療センター長上 谷 良 行

2.総 会(15:00~15:30)報告事項

  1. 庶務報告平成21年度地方会新役員について幹事会報告
  2. 学術集会報告
  3. 第19回こどもの健康週間報告
  4. 社保委員会報告
  5. 平成21年度事業予定

審議事項

  1. 平成20年度収支決算
  2. 平成21年度予算
  3. 会則の改定について
  4. その他

── 休 憩(15:30~15:40)──

3.小児救急・救命の立場から(15:40~16:40)

北九州市立八幡病院救命救急センター・小児救急センター 病院長市 川 光太郎

座 長 神戸大学大学院医学研究科内科系講座小児科学 教授松 尾 雅 文

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小児一次救急センターの立場か

阪神北広域救急医療財団 阪神北広域こども急病センター センター

山 﨑 武 美

 阪神北広域救急医療財団は、伊丹市、宝塚市、川西市及び猪名川町の3市1町により設立され、3市の医師会及び兵庫県の相互協力のもと、2008年4月、伊丹市に阪神北こども急病センターを開設しました。 事業内容は、夜間休日における初期小児救急医療の提供と電話相談、小児急病に関する啓発事業を行い、安心子育ての拠点となることを目指しています。診療は3市の医師会会員と財団登録小児科医師で行い、看護師による初期小児救急トリアージを取り入れ診療の円滑化を図りました。 2008年度の年間受診患者数は25,350人で、後送病院への紹介率は2.3%でした。一方、3市の各市立病院の2008年度時間外小児受診患者数は前年度に比べて減少し、当センターと二次医療施設との役割分担ができました。今後は地域の中核となる二次医療施設の整備充実と、適切な医療施設へ迅速に搬送できる三次医療施設も含めたネットワークシステムの構築が課題となります。 当センターが診療を開始して1年後に行った住民へのアンケートでは、診療内容や電話相談に関しては概ね満足している回答が得られましたが、まだ多くの家族は急病時の不安を抱いています。診療時間や病気の軽重にかかわらず、子どもが病気の際に育児の協力者があり、仕事との両立などが可能な社会体制が望まれています。 今後の最も重要な課題は、当センターがこれからも良質な医療を提供し続けて行くことです。このためには医療者の「働き甲斐」と「安心して働ける」環境を常に追求し実現するとともに、地域住民のニーズを知り、行政や医療関係者との理解を深めて行くことが重要と考えています。

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小児救急・救命の立場か

北九州市立八幡病院救命救急センター小児救急センター 病院長

市 川 光太郎

 小児救急医療体制が利用側である患児保護者からと提供側である医療側との双方から社会問題化して久しい。しかし、未だ抜本的な解決策は見出せていない。今後求められる理想の小児救急医療提供体制を確立していくためには現状の医療資源を有効活用しながらの短期的視点と中長期視点での計画を立案整備していく必要がある。 小児救急医療の現況は、育児不安の増大・社会の24時間化・専門医志向などから発する、いわゆる「いつでもどこでも小児科医による安心できる質の高い・完結的救急医療」としての保護者の要望の増加の問題と、夜間診療可能な小児科医不足・医療側の小児救急に対する見識不足・兼務体制による小児救急医療提供の継続などの医療提供側の問題とが複雑に絡んでいる。すなわち、受療者である保護者の多様な価値観に基づく時間外小児救急医療への要望の昂揚が起こる一方、それに対応できない医療提供側による、コンビニ医療、不要な受診、患者教育の必要性など、保護者への負の意見の増加など、そのお互いの意識の乖離が生じていることが現状をさらに複雑化しているといえる。今後、より理想的な小児救急医療提供体制を構築するには、この乖離の解消であり、大事な地域の医療資源を協働で育成する意識の共有であろう。これから求められる小児救急医療提供体制を創っていくためには医療側の余裕ある提供体制を行っていく必要があり、兼務体制から専任体制による医療提供が不可欠であり、小児救急医学としての学問的体系化が必要である。また、保護者側としては集約化重点化体制や、外来トリアージ体制などへの理解と協力が不可欠で、貴重な医療資源を有効利用するという視点を持ってもらうことが必要である。 一次~三次救急医療一体化施設での小児救急医療の実践が、医療提供体制の一つの型として考えられるが、当小児救急センターの現況と今後の展望をお示し、御意見を伺えればと願っています。

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