神戸大学医学部附属病院 脳神経外科
神戸大学大学院医学研究科 外科系講座 脳神経外科学分野
Kobe University Hospital,  Department of Neurosurgery   
トップ   アクセス   リンク    サイトマップ   お問い合わせ
 トップ
 教授挨拶
 外来案内
 診療内容
 スタッフ
 初期臨床研修
 専攻医募集
 週間スケジュール
 研修体験記
 研究活動
 教室の歩み
 関連病院
 その他
水頭症   


 水頭症とは脳脊髄液が頭蓋内腔に過剰に貯留した状態のことで、髄液循環障害や吸収障害で生じます。頭部CTやMRIで検査すると、脳室の拡大が認められ、すぐに診断できます。水頭症には頭蓋内圧の上昇を伴う水頭症と、頭蓋内圧の上昇を伴わない正常圧水頭症(normal pressure hydeocephalus, NPH)の2種類があります。頭蓋内圧の上昇を伴う水頭症は、多くは髄液の通過障害により起こる閉塞性(非交通性)水頭症で、脳出血、くも膜下出血、脳腫瘍などで生じます。また、くも膜下出血後1ヶ月ほどして髄液の吸収障害が進行して水頭症となる場合もあります。

 正常圧水頭症は、成人に起こり、歩行障害、尿失禁、精神活動の鈍化を3徴とする慢性の水頭症です。頭蓋内圧は正常範囲内にありながら、脳室が拡大し、頭蓋内に脳脊髄液が過剰に貯留します。原因はまだよく分かっていませんが、髄液循環障害が原因と考えられていて、髄液を吸収する場所であるくも膜下粒の閉塞とくも膜下腔の線維化のためと考えられています。

 水頭症の治療は通常、脳室腹腔短絡術(脳室腹腔シャント術)と言い、脳脊髄液を頭からお腹に流してあげる手術を行います。最近は脳脊髄液の流れすぎを防止でき、お腹に流れる髄液の量を調節できる圧調節型シャントバルブを用いることが多くなりました。また、水頭症の病態によっては、内視鏡による手術(第3脳室開窓術)なども積極的に行っております。
(内視鏡手術に関してはこちらをご覧ください。)



 【手術で治す認知症:正常圧水頭症など 】 



 認知症と一言で言っても、その原因はさまざまです。有名なものはアルツハイマー病ですが、脳血管性認知症は二番目に多く、さらに頭部外傷やレヴィ小体型認知症、その他の変性性疾患が続きます。残念ながら、これらが原因でいったん認知症になった患者さんを画期的な手術で治す、ということは、現在は無理です。しかし、上記の認知症の分類には入ってこない病気で、認知症の症状で見つかるけれども正確に言うと認知症ではない、なぜならば外科治療により早晩認知症症状が治ってしまう、いわば「認知症もどき」について、最近注目を浴びている、正常圧水頭症という疾患があります。さらにその他の疾患で認知症で発見され元疾患を手術すれば認知症も治るものもあります。


【正常圧水頭症:背景】

 厚生労働省では、症例数が少なく、原因不明で、治療方法が確立しておらず、生活面への長期にわたる支障がある疾患については、調査研究を推進するとして、難治性疾患克服研究事業(対象は臨床調査研究分野の130疾患)を行っており、その中のいくつかの神経系の病気の中に正常圧水頭症(normal pressure hydrocephalus; NPH)があげられています(厚生労働省難病情報センターhttp://www.nanbyou.or.jp/sikkan/056.htm)。NPHに対しては調査(班会議)が主な事業ですので、治療に関して、例えば重症難病患者拠点病院の設備や、医療費の自己負担の軽減が行われている訳ではありません。NPHの正確な発生頻度は明らかではありませんが、痴呆症と診断された患者さんの5〜6%が特発性NPHであると考えられています。


【正常圧水頭症:歴史的経緯】

 treatable dementia(治療可能な痴呆)として、1965年Damsらにより成人の水頭症が初めて報告され、大きな注目を浴びました。水頭症とは脳脊髄液が正常よりもたくさん脳内に貯留することにより脳を圧迫して起きる病気です。元来、水頭症は、発達期の小児で見つかるものとされ(先天性水頭症)、頭がだんだんと大きくなって、発育が思わしくない状態で発見されるものでした。脳脊髄液が窮屈な頭蓋内に溜まっていきますので、頭蓋内圧が亢進し、頭痛や嘔吐をきたすこともしばしばあります。しかしながら、大人になってから発症する水頭症には、ゆっくりと進行し、頭蓋内圧が高くならないものがあり、この場合、頭痛もしないし頭も大きくならず、症状としては、痴呆、歩行障害、尿失禁の3つが特徴的である、とされました(1970年Bensonら)。圧が高くないことより、この疾患群を正常圧水頭症、と名付け、小児期の水頭症とはまったく別の疾患と考えられています。




 【正常圧水頭症:原因と診断】

 なぜNPHになるのかは、はっきりとわかっていません。高齢者に多いことから、なんらかの加齢現象が原因の一部であることは間違いありません。診断は、CTやMRIで特徴的な脳室拡大があることがまず第一です。次に、上に挙げた3つの特徴的な症状があるか、少なくとも一部があるか、を診ます。しかしながら、高齢者の方には、さまざまな合併疾患があったり、そもそも老化現象で病気でなくても多彩な症状を持つことが多く、CT/MRIと症状だけでは確実な診断ができないのが実情です。非常に逆説的な話ですが、治療を試みて治ったら、それはNPHだった、治らなかったらNPHのようには見えても似て非なるものだった、という考え方もあります。







【正常圧水頭症:治療法】

 実はNPHの治療は30年以上前から続いています。頭蓋内の脳室に入れたシリコンチューブを皮膚の下を見えないように通して下腹部から腹腔内に導いて、

脳脊髄液を腹腔から吸収させるようにする脳室腹腔シャント術がその治療法です。脳外科の手術の中では比較的短時間(30分から1時間)で終わります。現在では、手術後退院してから、脳脊髄液の流れる量を皮膚の外からコントロールできるシャントシステムを使うことが主流となっています。国が定めた難治性疾患の130の疾患の中の一つ、というととても重病のような印象を受けますが、実は治療法は簡単で、treatable(治すことができる)認知症として、救われる患者さんはたくさん潜在的にいるものと考えられています。


【その他の外科治療で治る認知症症状】

 NPHでは、知らないうちに徐々に脳室に脳脊髄液が溜まり、脳が内側から圧迫されて認知症になります。同じような理屈で、脳脊髄液ではなく、別のものが徐々に大きくなり脳を圧迫するとき、認知症の症状を呈することがあります。一つは、脳の表面に血液が溜まり脳が外側から圧迫されて認知症の症状を呈しするもので、この病名は、慢性硬膜下血腫といいます。頭を怪我した後になることもありますが、怪我したことがなくても自然に血が溜まることもあり、高齢者では要注意です。この血液の溜まりは、30分ほどの簡単な手術で取り除くことができ、症状も劇的によくなります。(あまりおおっぴらにはなりませんが)国会の代議士の方でも、ちゃんと復帰されており、もちろん、普通のお年寄りでもtreatableで、手術すれば元に戻れます。

 もう一つは、良性の脳腫瘍です。脳腫瘍というと、とても深刻な病名に聞こえますが、実は脳腫瘍の半分以上は「良性」で、これも、徐々に大きくなり、脳をゆっくりと圧迫すると頭痛を感じることなく、認知症の症状だけが前面に出てきます。何年もかかってゆっくりと大きくなる腫瘍もあるので、症状がひどくならないうちに手術で腫瘍を取り除けば、認知症の症状も軽快します。






【まとめ】

 以上をまとめますと、脳を内側から(正常圧水頭症)、外側から(慢性硬膜下血腫)、あるいは脳の中から(脳腫瘍)、どのような場所からでも、「ゆっくりと」脳を圧迫する病気は、それを取り除けば、もとに戻る可能性がある、ということです。どの病気も高齢者になるほど多くなる病気なので、歳をとって認知症だからと簡単にあきらめないことです。


診療内容

Topへ




上記疾患につきましては、専門の外来担当医をご参照下さい。

<診療に関するお問い合わせ>

〒650-0017
神戸市中央区楠町7丁目5−2
神戸大学大学院医学研究科 外科系講座 脳神経外科学分野
TeL: (078) 382-5966 , Fax: (078) 382-5979

診療科長補佐   甲田将章
教授兼診療科長  甲村英二
  神戸大学医学部附属病院 脳神経外科 
〒650-0017 兵庫県神戸市中央区楠町7丁目5-2 , Tel: 078-382-5966, Fax: 078-382-5979
Copyrights(c)2009, Department of Neurosurgery, Kobe University Hospital
All Rights Reserved.