Division of Microbiology



C型肝炎ウイルス(HCV)および関連するウイルスの研究



HCVの発ガン機構に関する研究
 HCVは長期間の持続感染の後、高率に肝細胞癌を引き起こします。一方、宿主個体は、細胞傷害性T細胞等の作用によりHCV感染肝細胞にアポトーシスを誘導し、これを排除しようとします。このような生体防御機構を逃れてHCVが肝細胞癌を引き起こすためには、感染細胞のアポトーシスを抑制し、同時に癌化のプロセスを進行させる必要があります。この研究では、p53やRb蛋白等の癌抑制遺伝子産物と相互作用してその機能を抑制したり、Ras等の癌遺伝子と相互作用してその機能を促進するHCV蛋白について解析しています。我々はこれまでに、HCV非構造蛋白NS3がp53と相互作用することや、コア蛋白がp21細胞周期調節蛋白やRas癌遺伝子と相互作用することを明らかにしてきました。このような解析を通してHCVの発癌機構を詳細に解明し、その発癌を予防する方法の開発を目指しています。
HCVのウイルス増殖機構及びインターフェロン感受性/抵抗性に関する研究
 HCVの効率的なウイルス増殖系は未だ確立されておらず、ウイルス増殖の詳細な機構はほとんど判ってません。また、HCVの株によりインターフェロン感受性の異なることが知られていますが、HCVに対するインターフェロンの作用機序についてもあまり判っていません。この研究では、HCV遺伝子の複製に必要なHCV蛋白の同定およびそれらの複合体形成について明らかにするとともに、インターフェロン感受性決定因子としてのウイルス側および宿主側の要因を解析しています。この研究を通して、インターフェロン治療効果を増強する方法の開発を目指しています。
HCVの分子疫学に関する研究

 HCVは少なくとも6種類の遺伝子型に分けられ(タイプ1〜タイプ6)、それぞれはさらに数種類ずつのサブタイプ(HCV-1a 〜 HCV-1c, HCV-2a 〜 HCV-2f等)に分けられます。HCVサブタイプは地球レベルでの地域偏在性を示します。この研究では、わが国をはじめとしてアジア諸国での種々の患者グループにおけるHCVについて分子疫学の観点から解析しています。この研究を通して、タイやインドネシアにおいて特有の新しいサブタイプのHCVを複数種類見い出してきました。このようなHCVの多様性に関する情報は、HCVの肝病原性や癌原性の解析あるいはワクチンの開発等において重要なものです。