有病者歯科治療

近年の急速な高齢化社会に伴い、歯科医療現場においてもさまざまな基礎疾患を有する患者さまに遭遇する機会も増加しています。このように基礎疾患を有する患者さまには個々の注意を払う必要があります。心疾患、脳血管障害、糖尿病、腎臓病、自己免疫疾患などさまざまな疾患で治療を受けられていれば、直接的な合併症のみならず、治療薬の副作用なども考慮する必要があります。

歯科処置の中でも特に観血的処置(抜歯など)を行う時には、@診察台でのドキドキ、A麻酔の注射への恐怖、B処置への不安、C帰宅後の再出血への不安、D感染への不安など最低でも5つの注意点があるのです。こんな不安をすこしでも少なくできる方法として、神戸大学病院口腔外科では短期間入院での歯科処置を行っています。入院して処置をおこなえば、より精神的な安心を得ることもできますし、もしなにか問題があっても当直の口腔外科医が迅速に対応することが可能です。

当院が考える有病者歯科の入院基準は次に示すとおりで、入院患者数は2007年度で62名、2008年度49名、2009年度55名、2010年度は50名と全入院患者(おおよそ毎年300320名)の約1/6を占めています。
実際の入院期間はどのくらいであるかというと、約半数が3日以内であり、8割が1週間以内に退院していました。
入院を必要とした基礎疾患は高血圧、心疾患(不整脈、弁膜症、冠動脈疾患など)、肝障害、脳血管障害、腎障害と多種にわたっていました。
基礎疾患に対する内服治療では抗血小板薬、抗凝固薬の内服が大部分を占めていました。
最後に、人間がより良い食生活を継続させるには、口腔機能の改善・維持が最も重要です。それは、健康な人も、なんらかのご病気(基礎疾患)を持っておられる人も同じなのです。車イスでしか移動できないなどの身体障害のある人や、内科疾患で多くの薬を飲んでおられる人も、観血的処置(抜歯など)も含めて適切な歯科治療をうけることは可能なのです。「えっ、歯を抜くだけなのに入院?それは・・・」というお考えではなくて、ご自身の安心のためにご検討してみてください。

よくある質問 Q&A

当科が考える有病者歯科の入院基準

・止血困難な患者様
・基礎疾患が管理不良の患者様
・ステロイド薬の長期間あるいは高容量服用の患者様
・複数の基礎疾患を有する患者様
・易感染性の患者様
・一人暮らしの高齢者様
・通院困難な患者様

・抗血栓療法が施行されている患者

@抗凝固療法(ワルファリン)

弁膜症    閉塞性動脈硬化症

心房細動   肺塞栓症

深部静脈血栓症  拡張型心筋症

動脈狭窄症           など

A抗血小板療法(アスピリンなど)

  心筋梗塞

狭心症

脳梗塞             など

 


・抗血栓療法中患者の抜歯

1)抗血栓薬の休薬は心原性脳梗塞発症や再狭窄にともなう心筋梗塞や脳梗塞の再発のリスクがあり、発症すると非常に重篤である。

2)ワルファリンを原疾患に対する至適治療域に コントロールした上で、ワルファリン内服継続下での施行が望ましい

3)抗血小板薬は内服継続下での施行が望ましい

 

20081月〜201011月に神戸大学病院口腔外科および関連施設において抗血栓薬内服継続下に抜歯が施行された282例(589本)について。

性別  男性  190 例      年齢  22歳〜90

    女性    92 例         (平均69.8歳)

場所  入院 :  236例      抗血栓療法の種類

        外来 :    46例       ワルファリン単独 168

                     抗血小板薬併用 114


・抗凝固療法患者282例の原疾患内訳

よくある質問 Q&A