Kobe University Hospital
Oral and Maxillofacial Surgery


    



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 有病者歯科治療 






  全身疾患を有する患者さんへ

      近年、歯科医療の現場でも超高齢社会の影響を受け、いくつかの基礎疾患を有し、複数の
     内服薬を服用している患者さんが増加しています。

      そのような方の多くは、ご自分の内服薬を次のように理解していると思います。
      @ 「血液がサラサラになる薬」
      A 「血圧をさげる薬」
      B 「骨を強くする薬」(骨粗鬆症の薬)
      C 「リウマチの薬」
      D 「血糖値を下げる薬」
      E 「抗がん剤」
      F 「免疫を抑える薬」 など。

      これらの薬を服用している患者さんが抜歯を代表とする歯科観血的処置をうけると、どんな
     合併症が起こるのでしょうか?

      上記の薬に対応して回答していきます。
      @ 抜歯部位からの血が止まらない。⇒ 抜歯後出血。
        診察室の中だけでなく、帰宅してからの出血、翌日に起こる出血もあります。
      A 抜歯部位からの血が止まらない。⇒ 抜歯後出血。
      B 抜歯部位の創が治らない。骨髄炎、骨壊死(骨が腐ってくる)が起こる可能性があります。
      C 抜歯部位の創が治らない。抜歯後感染の可能性があります。
      D 抜歯部位の創が治らない。
        糖尿病により創傷治癒能力が低下しているため、抜歯後感染の可能性があります。
        また、抜歯後疼痛や抜歯後の炎症で開口障害が出現した場合などでは、その後の食事量が
        低下し、血糖値を下げる薬を服用してしまうと低血糖になる危険性もあります。
      E 抗がん剤により骨髄抑制が出現している場合には、白血球減少による抜歯後感染や
         血小板減少による抜歯後出血の危険性があります。
         また、抗がん剤の副作用で嘔気や嘔吐を認めている場合には、抜歯をすることで
         さらなる栄養状態の悪化につながることも考えられます。
      F 抜歯部位の創が治らない。抜歯後感染の可能性があります。


 

  実際の症例


   ■ 抜歯後出血 ■

     



   ■ 抜歯後感染による骨の露出(腐骨形成) ■

   

      先に示した通り、歯科観血的処置、つまり抜歯一つにしてもさまざまな合併症が起こる可能性が
     あります。ひとたび合併症が起こると、抜歯後感染では通院回数が増えたり、抗菌薬の長期服用
     が必要になったり、抜歯後出血では夜間の救急処置が可能な医院を探さなくてはなりません。
      また、骨壊死が起これば腐骨除去といった外科処置が必要になります。

      このような合併症出現の危険性を低下させる、また患者さんの不安を取り除くことを目的に、
     神戸大学病院口腔外科では短期入院下の歯科観血的処置を推奨しています。
      入院下での処置を行えば、疼痛や出血に対して当科の当直医が緊急対応させていただきます。


  入院について

   ■ 当科が考える有病者歯科の入院基準 ■

        ・ 止血困難な患者さん
        ・ 基礎疾患が管理不良の患者さん
        ・ ステロイド薬の長期間あるいは高容量服用の患者さん
        ・ 複数の基礎疾患を有する患者さん
        ・ 易感染性の患者さん
        ・ 一人暮らしの高齢者の方
        ・ 通院困難な患者さん


   ■ 入院患者数の推移 ■

     

      上のグラフは、歯科観血的処置を目的とした入院患者数の推移を示しています。
      2011年度は85名と著明に増加しています。これは骨粗鬆症の患者さんが服用することの多い
     「骨を強くする薬」と「顎骨の壊死」の関連性について広く注意喚起されたことが一因です。



   ■ 入院期間 ■

     

      実際の入院期間は、約半数が3日以内であり、8割が1週間以内に退院していました。


  基礎疾患について

   ■ 基礎疾患の内訳 ■

     

      入院を必要とした基礎疾患は高血圧、心疾患(不整脈、弁膜症、冠動脈疾患など)、肝障害、
     脳血管障害、腎障害と多種にわたっていました。


   ■ 基礎疾患への治療歴 ■

     

      基礎疾患に対する内服治療では抗血小板薬、抗凝固薬の内服が大部分を占めていました。


  抗血栓療法について

   ■ 抗血栓療法が施されている患者さん ■

        @ 抗凝固療法(ワルファリン)
         ・ 弁膜症
         ・ 閉塞性動脈硬化症
         ・ 心房細動
         ・ 肺塞栓症
         ・ 深部静脈血栓症
         ・ 拡張型心筋症
         ・ 動脈狭窄症 など

        A 抗血小板療法(アスピリン など)
         ・ 心筋梗塞
         ・ 狭心症
         ・ 脳梗塞 など


   ■ 抗血栓療法中の患者さんへの抜歯 ■

     1) 抗血栓薬の休薬は心原性脳梗塞発症や再狭窄にともなう心筋梗塞や脳梗塞の再発の
        リスクがあり、発症すると非常に重篤になります。
     2) ワルファリンを原疾患に対する至適治療域にコントロールした上で、ワルファリン内服
        継続下での施行が望ましいとされています。
     3) 抗血小板薬は内服継続下での施行が望ましいとされています。


   ■ 抗血栓療法中における抜歯 ■

     

     


      人間がより良い食生活を継続させるには、口腔機能の改善・維持が最も重要です。
     それは、健康な人も、なんらかのご病気(基礎疾患)を持っておられる人も同じなのです。
     車イスでしか移動できないなどの身体障害のある人や、内科疾患で多くの薬を飲んでおられる
     方も、観血的処置(抜歯など)も含めて適切な歯科治療をうけることは可能なのです。

      「えっ、歯を抜くだけなのに入院?それは・・・」というお考えではなく、ご自身の安心のために
     ご検討をお願いします。


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