神戸大学 神戸大学大学院医学研究科 糖尿病・代謝・内分泌学分野
臨床研修について

臨床研修と専門医制度

初期研修医の先生へ

卒後の新臨床研修制度が始まり、進路について悩んでいる方も多いと思います。モラトリアム期間が伸びた分だけ悩みも深いかもしれません。
内科医になりたいけれど、卒後三年目あるいはそれ以降の進路について悩んでおられる先生にとって少しでも参考になればと思い本文を書きます。
研修は市中病院ですべきなのか大学病院ですべきなのか、あるいはジェネラリストを目指すべきかスペシャリストを目指すべきかそしてどの分野をいつ専門にしようか、研究、学位はどうしようかなど悩みは尽きないと思います。

研修を市中病院でするべきか,大学病院でするべきか

結論から言いますと両方での研修をお勧めします。皆さんがよくご存じのように市中病院ではコモンディジーズについて症例数が豊富です。またコメディカルを含めた環境や給与は大学病院より良い場合が多いでしょう。専門医指向が進む流れの中で、内科医としてプライマリーケアーをきちんとできることは非常に重要ですし、どんな患者様が来られても基本的な対応ができるのは内科医としては当然のことで、それが内科医としてのプライドだと思います。そのような訓練のためには市中病院での研修は重要だと思います。

ただしそれだけではやはり不十分です。これは私自身の経験ですが、例えば教科書に載っていないような症例に遭遇したとき、症例についてじっくり取り組み病態を理解し緻密な治療が必要なとき、また専門性の高い疾患を診断し最新の治療を行いたい時などには市中病院では解決が難しい場合があります。そのような問題解決には大学病院が適しています。確かに、待遇や環境において劣っている部分があるのも事実ですが、大学病院でしかできない研修内容というのは確かに存在します。

ですから是非両方での研修を相補的にされるのがよいのではないかと思います。また待遇について気になる方もおられると思いますが、今の皆さんは内科医として一人前になるための非常に重要な訓練期間にいます。今貯金を増やすことより良い研修をして自分自身を向上させることがいかに大切かは後できっと理解していただけると思います。待遇より内容で考えましょう。

ジェネラリストかスペシャリストか

少し前述しましたが、内科医を目指すなら、まずジェネラルの基本は身につけるべきだと思います。最近臓器別になって、患者様は調子が悪いのに専門の臓器は大丈夫だからとたらいまわしにされることがあります。これは内科医としては決して許されないことだと思います。そのためには自分の専門分野以外についてもすべてを背負うことはできませんが、少なくとも適格なアドバイスができるだけの力を身につけるべきです。

具体的にどうすればよいかということですが、前期研修が終わったあとに少なくとも、1―2年はできるだけジェネラルな疾患を診ることのできる研修をすべきだと思います。そして専門の勉強を始めた後も意識して他の分野のアップデートを吸収し、内科医としての勉強は一生続けるという気持ちを持ち続けることが重要です。

どの分野をいつ専門にするか

私の専門は内分泌代謝ですので、本分野について述べたいと思います。
内分泌代謝内科の臨床として、かつては古典的な内分泌代謝疾患の専門医あるいは特殊なホルモンと疾患を扱うマニアックな科というイメージが強かったかもしれませんが、糖尿病内分泌内科領域の対象は拡大の一途をたどっており、生活習慣病全体を含めてジェネラルを見ることのできる内科医がめざすべきひとつの方向であると考えています。

つまりそのたどりつく先は、専門領域の頻度は少ないが見のがされている疾患を診断し治療する専門性を持った一般(総合)内科臨床医に近いものかも知れません。対象疾患は、肥満、脂質代謝異常、メタボリック症候群、糖尿病、高血圧症、動脈硬化症、骨粗鬆症、骨・カルシウム代謝異常症、甲状腺疾患、下垂体疾患、副腎疾患、性腺疾患など非常に広範です。

このような疾患を持つ患者は日本で2000万人を越え、ニーズの非常に高い領域でもあります。もちろん今亡くなってしまいそうな患者様の命を救うことは極めて重要なことです。しかし助かった患者様はさまざまな問題を抱えながらその後の人生を歩んでいかれます。

そして現在の医療の目指すべきひとつの重要な方向性はそのような患者様のQOLをあげ、健康寿命をのばすことです。それはまさに糖尿病・代謝・内分泌領域の使命であり、患者様と共に歩むことのできるやりがいでもあります。専門の研修についてはまずある程度ジェネラルに診ることができるようになった4年目以降をお勧めします。

専門医をとるべきか

臨床医としてやっていこうと考えるなら、答えはシンプルでイエスです。今後いろいろな意味で専門医の重要性は高くなっていきます。理想的には内科専門医と糖尿病・代謝・内分泌の領域であれば、糖尿病専門医および内分泌代謝専門医を持っておくことは非常に重要です。

しかし最近専門医のハードルが厳しくなってきており、今後は内科認定医とsubspecialityの専門医をとるのが一般的になるでしょう。またジェネラリストを目指している場合にもいずれかの専門医は持っている方が有用だと思います。私たちの内科では糖尿病専門医および内分泌代謝専門医の両方を取得することが可能です。

研究・学位はどうすべきか

研究、学位についてはいろいろな意見があると思います。確かに、学位を持っているからと言って待遇はあまり変わらないかもしれません。また臨床能力には直接関係しないかもしれません。しかし私自身はたとえ将来臨床で生きていきたいあるいは開業を考えられている場合にも、是非されたほうがよいと思います。

個人的な体験ですが、私は卒後4年目から大学院に入学し研究を始めました。卒後3年目に内科医として少し自信もついたころに痛感したことは、私たちは医者として患者様にできることは本当に限られているということでした。患者様は医者が直すのではなくて自身の治癒力で直るのです。もちろん悪循環に陥っている時に適切な治療を施すことよって直るというのが一般的ですしそこに医者の腕のふるいどころがあるのですが、治癒力がない場合には医者は無力です。

どんなに最新の治療を行っても、どんなに高い薬を使ってもやはりどうしようもないことがあるのは皆さんも経験されたことがあるかも知れません。私はそのような無力感を感じた時に、これをなんとかできるのは研究ではないかと考え、研究を始めました。そして今は正しい選択だったと思います。

現在わからない病態を理解し、病気の本質を明らかにし、その本質に対して根本的な治療を行うためには医学研究を進めることが必須です。もちろん、その道は決して平坦ではありませんし、簡単なことではありませんが、医学が発展して現在直らない病気を直すためには誰かがやらなければなりません。もちろんそんな大層なことではなくても、研究はとても面白いものです。

私たちは、糖尿病がなぜおこるのかすなわちインスリン分泌あるいはインスリン作用がどのように調節されているのか、糖尿病をどのように治療すればよいのか、成長ホルモンはどのように作用しているのか、老化がいったいどのように起こるのか、代謝や老化調節に関連した新しいホルモンを見つける、骨粗鬆症の病態を明らかにする、今診断できない病態を明らかにするといった素朴な問いに対する答えを研究で明らかにしたいと思っています。

問いに答えるためにまず焦点を明らかにし、仮説をたて、実証するための方法を検討し、実際に実験を行いますが、新たな発見ができた時にはたとえちっぽけなものであっても最高に幸せな気分になることができます(多くは自己満足かもしれませんが)。基本的に研究というのは非常にロマンチックなものなのです。

ただ私たち医者が行う研究の使命として最終的には患者様にフィードバックすることをいつも目指しています。そこまで研究に興味のない方でも、大学院での研究の過程で科学的なものの考え方や最新の情報をいかに取り入れ実践していくかという考え方は、臨床をしていく上でも必ず役に立ちます。

臨床においては、いかに技術を身につけ実践するかというアートの側面、いかに患者様に納得し満足してもらうかというサービス業としての側面、そして病態を深く理解しエビデンスに基づき科学的根拠にのっとった正しい診断治療を行うというサイエンスの3つの側面があるとおもいますが、数年でも研究に携わることはこのサイエンスの側面をしっかり学ぶことができるのではないかと思います。

医学研究科糖尿病・内分泌内科学部門 准教授  高橋 裕

このページの先頭へ
卒後研修について

専門医そして学位取得を目指す場合には卒後3年から5年目に大学院に入学あるいは医員として帰局し、さらに大学で研修します。大学院生として、あるいは医員として、大学病院での臨床に触れながら、研究生活を送ってもいいですし、一旦臨床を離れて基礎研究に没頭するのもよいと思います。研究者として大学病院で研究活動を行うことは、単に学位を取得するためだけでなく、より完成された臨床医になるためにも不可欠なステップです。
▶Read it All...

日本糖尿病学会専門医・内分泌代謝専門医を取得するために

ここでは後期研修を行う際に専門医を取得するためにどのように皆さんをお手伝いできるかをお知らせしたいと思います。重要なことは遅くとも後期研修開始時に内科学会に入会し、まず卒後3年目以降できるだけはやく認定内科医を取得しておくことです。
▶Read it All...


このページの先頭へ