神戸大学 神戸大学大学院医学研究科 糖尿病・代謝・内分泌学分野
留学体験記

海外留学を経て日本で活躍されている先生、現在まさに海外で研究を続けておられる先生などの貴重なお話を掲載します。
是非、お役立てください。

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シアトルのワシントン大学医学部で研究生活を送られていた楯谷先生からのお便りです。

楯谷三四郎 Sanshiro Tateya


平成11年卒の楯谷三四郎と申します。
2008年6月よりワシントン大学医学部にて研究留学生活を始めました。もうすぐ2年がたとうとしていますが、留学までの経緯、ここにきてこれまで感じたこと、そしてシアトル・アメリカについて書いてみたいと思います。

留学までの経緯

3年間の内科研修の後、糖尿病代謝・消化器・腎臓内科(旧第二内科)にて大学院生活を始めました。
病態のより詳細なメカニズムはどうなっているのか、どうしてこうなるのか、といった研修医時代に感じていたことをつきつめて考えてみたいと思ったからです。

といっても大学院の特に1年生の時は糖尿病研究の最先端についていくのがやっとで、グループ長であった田守先生の半ば言われるままといった感じで、自分で仮説を立てて、実験を計画し検証するといったレベルに到達するまでには時間がかかりました。

色々試行錯誤していくうちに研究が面白くなったのが2年生から3年生にかけてで、糖尿病発症における脂肪組織の慢性炎症、特にその病態におけるMCP-1の意義を中心に研究をしておりそれが論文として形になりそうだと感じた頃から次の展開として留学について考えるようになりました。

田守先生ご指導の下、幸い4年で卒業できましたが、血中レベルのMCP-1はインスリン抵抗性発症に重要なのかなど取り組むべき課題がまだ多く、前教授春日雅人先生ご推薦のもと鈴木万平糖尿病学国際交流財団の奨学金を得て留学することになったのは卒後3年目になってからでした。

現在のラボ

留学先のワシントン大学医学部、Diabetes and Obesity Center (D&O)は2008年9月に新設され、このテーマに関わる14のラボから構成されており、私はその中のCardiologyのラボに属しています。中枢において世界的にご高名なMichael W Schwartz やプロテオミクス、脂質代謝・動脈硬化、免疫・炎症分野のそれぞれHeinecke JW、Bornfeldt KE、Chait Aといった最先端のPIからなる様々なラボがあり、異なる分野を超えて包括的に糖尿病・肥満研究ができる環境にあります。

私はインスリン感受性臓器間の臓器間クロストークに特に興味があり、やや特殊なケースかもしれませんが、循環器内科医であるFrancis Kim と内分泌内科医であるMichael W Schwartzの2人のPIの指導下にあり、主に肝臓内での肝細胞と血管内皮細胞、免疫細胞の相互作用、そして視床下部との相互作用について、両指導者の中間に位置する肝臓における研究をリードするよう指示されています。

現在細胞、マウスでの研究が主ですが最終的には臨床研究をめざし糖尿病患者さんでの病態解明につながるか研究を続けていきたいと考えております。
Francis Kim と週1回、Michael W Schwartzと月1回、そしてD&O全体で年2-3回の発表機会があり様々な分野の先生方にご指導いただいています。

楯谷先生

日本のラボとの違いについて

こちらは日本と違って土日に実験する人はあまりいません。平日も9-10時ごろ来て、6時頃には帰る人がほとんどです。それなのにどうして多くの業績を出しているのか不思議でした。週5日間実験に使えることはもちろんですが、いいテーマ、新たな課題があるとあっという間に準備しみんなで手分けして取り組む、そういう姿勢はどのラボでも基本的に共通しているようで、時に複数のラボにまたがっておおきなうねりとなって進行する、常にそういう現象が大なり小なり同時進行している、そういうところにアメリカのラボの強みを感じています。これは国家的な危機、課題に直面した時、普段はバラバラの個人個人が大きくまとまって困難に突き進み打開していくというアメリカの本質的な強みに通じるものがあると感じています。

話はそれましたが、ラボレベルではon とoff の時間がはっきりわかれていてonの時間がかなり濃密で組織的、効率的であると感じております。
アメリカではやや孤立した場所にありますが、アメリカ各地、そして世界からも度々著名な先生方が講演にこられますが、先日、清野進先生がご講演に来られました。
シアトルで現教授のご講演を拝聴するのは不思議な気がしましたが、普段以上に出席者が多く、まさにアメリカ全土、そして世界でご活躍されていると感じた次第であります。

シアトル・ワシントン州について

留学先を選ぶにあたり前教授春日先生に色々ご指導いただきましたが、何をしたいか、どのボスの所でやりたいかもさることながら住むにあたってどの都市が適当かも重要であるとアドバイスを受けました。ボストン、ニューヨークなど東海岸に行きたい気持ちはありましたが、シアトルの都市としての安全性、環境のよさに加え、春日先生ご推薦の下、ボスがSenior fellowのポジションとそれに見合う経済的サポートを用意して下さった点も決め手になりました。

実際シアトルは安全で平均所得、平均的な学歴がとても高い街で度々全米住みやすい街ランキング1位になることも多く、人種的にもCaucasian以外はアジア系が多く、快適に暮らせる街といえます。
ワシントン州は別名Ever Green State といわれ車で数時間で行ける距離にオリンピック国立公園、レイニエ山国立公園など豊富な大自然があり、まさに海と山と湖に囲まれた州で週末、休日など楽しく過ごすことができます。

渡米後半年ほどしてから幸い家族ぐるみでお付き合いするアメリカ人の友達を何人か作ることができました。子供などはお互い友人達のご家庭に入りびたっている状態で家族ともども貴重な財産と感じています。このままアメリカの文化、習慣に染まっていくことを選択し、困難もあるけれどもアメリカンドリームに挑戦する人達の気持ちがよくわかるようになりました。様々な国の人達を引き付けるアメリカに自分達もすっかり引き付けられてしまったのを感じます。

おわりに

最後にこのような貴重な経験をさせていただいているのは大学院生の頃からの田守先生、前教授春日先生のご指導と、あたたかく見守ってくださる現教授清野進先生のご理解あってのことと存じております。
この場を借りて厚く御礼申し上げたいと思います。

留学された諸先生方の業績に恥じぬよう結果を出し、帰国後はこちらで得た経験、知識をもとに糖尿病代謝・内分泌内科の発展に微力ながら貢献していきたいと思います。

末尾ながらこの体験記が一人でも多くの若い先生方が世界への挑戦を志すきっかけになれば幸いに存じます。



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