WHHL/WHHLMIウサギのページ  


  渡辺嘉雄先生追悼論文  
Atherosclerosis 2009 Nov; 2007(1):1-7.


総説 WHHL/WHHLMIウサギ 
  (関西実験動物研究会会報 2008; 30:1-12)  
「高脂血症・動脈硬化に関する研究における
WHHLウサギを用いた研究の貢献」

アニテックス 15: 169-172 (2003) (PDF file)
(出版社,研成社,の許可の下に掲載)
「WHHL/WHHLMIウサギの
メタボリックシンドロームに
関する病態について」

<アニテックス 17 (4): 125-128 (2005) (PDF file)
(出版社,研成社,の許可の下に掲載)


WHHL/WHHLMIウサギの概要 (PDF ファイル)


1. WHHLウサギの起源となる突然変異ウサギの発見と系統確立

1) WHHLウサギの起源となる突然変異ウサギの発見の経緯

WHHLウサギの起源となる突然変異ウサギが1973年に渡辺嘉雄動物実験施設前教授によって発見され,7年かけて系統化され,1980年にWHHLウサギと命名された.1973年,本学の旧実験動物施設の飼育管理担当者5人中2人が長期入院することになり,当時多数飼育されていたウサギについて飼育管理方法の省力化の可能性を検討することになった.渡辺前教授はオスの日本白色種ウサギ(100日齢)を用いて給餌を毎日の制限給餌から隔日に変更することがウサギの血清生化学パラメーターに与える影響を検討した.その実験に使用したウサギの中に血清総コレステロール値が正常ウサギの約10倍の高値を示すウサギを発見した.このウサギの高コレステロール血症は一時的なものではなかったことから,渡辺前教授は突然変異による高脂血症と判断し,系統開発を開発した.当時の日本では,一部の専門家を除いては高脂血症の重要性についての認識は乏しかったにもかかわらず,高脂血症ウサギを「異常動物」として無視せずに系統開発に取り組んだことは渡辺前教授の先見性を表している.くしくも1973年は,後にノーベル賞を受賞したGoldstein JLとBrown MSがLDL receptor pathway仮説を提唱した年であり,現在世界中で高コレステロール血症の第一選択肢として使用されているスタチンを国内製薬会社の研究グループが世界で最初に発見した年でもあった.
その後,WHHLウサギを通して当施設はGoldstein JLとBrown MSのグループ,スタチンを最初に発見した研究グループと共同研究を実施することになった.これらの3つのイベントが生体内のコレステロール代謝に関する研究や脂質低下療法の発展に果した役割はきわめて大きいと高く評価されている.

2) WHHLウサギの系統確立

渡辺前教授は突然変異ウサギを HLR (hyperlipidemic rabbit) と命名し,正常日本白色種ウサギ10匹と交配し遺伝様式を確認した.第一世代はいずれも正脂血症であり,第二世代を用いた兄妹交配で約25%が,親子交配で約50%が高脂血症を示したことからメンデリズムに従い劣性遺伝することを確認した.親子交配あるいは兄妹交配による近親交配では第3世代以降繁殖能力が著しく低下し,系統維持が困難となった.渡辺前教授はline間交雑や正常ウサギからの再度の系統育成等を実施し,1980年に系統として確立,国内誌に WHL (Watanabe heritable hyperlipidemic) ウサギの名称で発表した.同年動脈硬化に関する国際誌 Atherosclerosis に投稿したところ,編集者から "WHL" ではなく "WHHL" とするべきであるとのコメントがあり,"WHHLウサギ"となった.海外では WHHL は発音しにくいことから "Watanabe rabbit" と通称されている.WHHLウサギに関する論文が国際的な専門誌に掲載されたことから,国内外の研究機関から分与の依頼があり,海外13カ国40機関,国内55機関に分与してきた.

2. 系統開発

系統として確立した当時(1980年)のWHHLウサギでは,大動脈には動脈硬化病変が発生したが,冠動脈における動脈硬化の発生率は極めて定率であった.冠動脈病変の発生率を上昇させるために選抜交配を実施し,1985年に冠動脈に動脈硬化が発系するWHHLウサギを確立した(Atherosclerosis 1985; 56: 71-79).しかし,冠動脈の狭窄病変は軽度でマクロファージやリピッドコアの少ない病変であった.高度の冠動脈病変が発生する系統に改良するべく,再度選抜交配が実施された.1990年に渡辺嘉雄教授が定年退官後,塩見雅志准教授がWHHLウサギコロニーおよびWHHLウサギに関する研究を引き継いだ.6年間の選抜交配の後,1991年に冠動脈に重度の動脈硬化が発生するcoronary atherosclerosis-prone WHHLウサギが開発された(Atherosclerosis 1992; 96: 43-52). 冠動脈に重度の動脈硬化病変が発生しても心筋梗塞が発症しなかったため6年をかけて新たな選抜交配を実施し,2003年に心筋梗塞を自然発症するWHHLMIウサギを開発した(Arterioscler Thromb Vasc Biol 2003;23 (7): 1239-1244; Commentary to the International Atherosclerosis Society, IAS Website (http://www.athero.org/comm-index.asp) September 5, 2003.; J Atheroscler Thromb 2004 Sep; 11 (4): 184-189)

(新聞記事)
日経メディカル オンライン 2012年8月8日 Topix。第44回日本動脈硬化学会(福岡、2012年7月19−20日)のシンポジウム「急性心筋梗塞症のメカニズムに迫る 臨床病理と動物モデルから動脈硬化性プラーク不安定化・破綻の原因を探る」での発表「冠動脈病変破綻におけるMMP陽性マクロファージとスパズムの役割」が紹介されました
日経産業新聞 2007年7月6日「メタボウサギ作製 神戸大、研究用」
毎日新聞 2003年7月11日「3年以内に心筋こうそく自然発症のウサギ開発」
讀賣新聞 2003年7月11日「心筋こうそく100%発症ウサギ 神戸大チーム開発」
神戸新聞 2003年7月11日「心筋梗塞ウサギ 交配実験で誕生」
朝日新聞 1985年10月19日「ノーベル賞受賞研究にWHHLウサギが貢献」
朝日新聞 1985年10月15日「ノーベル賞受賞研究にWHHLウサギが貢献」
神戸新聞 1981年3月22日「高コレステロールのウサギを開発」


1) 高脂血症および動脈硬化症を自然発症するWHHLウサギを開発した (実験動物 1997; 26: 35-42; 麻布獣医大誌 1997; 2: 99-124; Atherosclerosis 1980; 36: 261-268).

2) 選抜交配によって冠動脈に動脈硬化が好発するWHHLウサギに改良した. (Atherosclerosis 1985; 96: 43-52).

3) 選抜交配によって冠動脈に高度の狭窄病変が発生するWHHLウサギに改良した. (Atherosclerosis 1992; 96: 43-52).

4) 選抜交配によって心筋梗塞が自然発症するWHHLMIウサギを開発した. ( Arterioscler Thromb Vasc Biol 2003; 23 (7): 1239-1244; J Atheroscler Thromb 2004 Sep; 11 (4): 184-189)

( 詳細については WHHLMIウサギ(和文) あるいは 英文 をご覧下さい )



3. 脂質代謝に関する研究
1) WHHLウサギの高コレステロール血症は低比重リポ蛋白(LDL)の異化の低下に由来することを確認した (FEBS Lett 1980; 118: 81-84 ).
2) WHHLウサギの高コレステロール血症がLDL受容体機能の低下に由来することを確認した (FEBS Lett 1980; 118: 81-84;Eur J Biochem 1981; 118: 557-564;Proc Natl Acad Sci USA 1981; 78: 2268-2272; J Biol Chem 1981; 256: 9789-9792 ).
3) コレステロール合成の律速酵素であるHMG-CoA還元酵素の拮抗阻害剤であるスタチンは血清コレステロールを低下させうることを確認し,その機序としてLDL受容体の発現の増加と肝臓からの超低比重リポ蛋白(VLDL)の分泌の低下に由来することを確認した (Atherosclerosis 1981; 38: 27-31 ;Japan J Pharmacol1992; 59: 65-70; Metabolism 1994; 43: 559-564; Arzneim Forsch/Drug Res1994; 44: 1154-1156).
4) スタチンと胆汁酸吸着剤との併用によって血清コレステロールは相加的に低下することを確認した (Atherosclerosis 1990; 83: 69-80 ; Japan J Pharmacol1992; 59: 65-70).
5) 肝でのVLDL合成に関与するMTP (microsomal triglyceride transfer protein) 活性を阻害することによって血清コレステロールは顕著に低下することを確認した (Eur J Pharmacol 2001; 431: 127-131 ).
6) WHHLウサギでは加齢によって血清コレステロール値が低下するが,その機序として肝からのVLDLの分泌の低下が関与していることを確認した (Metabolism 2000; 49: 552-556 ).
7) WHHLウサギでは妊娠によって血清コレステロールが低下するが,その機序としてLDLの異化の亢進が関与していることを確認した (Biochim Biophys Acta 1987; 917: 92-100 ).


4. 動脈硬化に関する研究
1) 動脈の種類(大動脈,冠動脈,脳底動脈等)によって動脈硬化病変の構成成分に差異があることを確認した (Arterioscler Thromb 1994; 14: 931-937 ; Atherosclerosis 2001; 156: 57-66).
2) 動脈硬化の発症に関与する因子は冠動脈と大動脈で異なることを確認した (Atherosclerosis 1992; 96: 43-52).
3) コレステロール以外の因子が動脈硬化の発症・進展に関与している可能性を確認した (Atherosclerosis 1992; 96: 43-52).
4) 冠動脈病変好発WHHLウサギの場合,高血圧を誘導しなくとも脳底動脈に動脈硬化が発症することを確認した (Atherosclerosis 2001; 156 (1): 57-66).
5) 心筋梗塞を自然発症するWHHLウサギ, WHHLMIウサギを確立した( Arterioscler Thromb Vasc Biol 2003; 23 (7): 1239-1244 ).
6) WHHLMIウサギの場合,冠動脈に不安定動脈硬化病変が認められるにもかかわらず,動脈硬化プラークの破裂等による血栓が生じていない.すなわち,動脈硬化プラークの破裂には他の危険因子が重要な役割を果していると考えられる ( Arterioscler Thromb Vasc Biol 2003; 23 (7): 1239-1244 ( 詳細については WHHL rabbit のサイト(英文) をご覧下さい ) ).
7) スタチンによる血清コレステロールの低下によって動脈硬化の発症・進展を抑制できることを確認した (Biochim Biophys Acta 1988; 960: 294-302; Atherosclerosis 1990; 83: 69-80; Arterioscler Thromb Vasc Biol 1995; 15: 1938-1944; Br J Pharmacol 1999; 126:961-968 ; Atherosclerosis 2001; 157 (1):75-84 ;Atherosclerosis 2005; 178 (2):287-294 ).
8) 動脈硬化病変の構成成分に関する定量解析方法を確立した (Arterioscler Thromb 1994; 14: 931-937 ).
9) 血清コレステロール低下療法によって,動脈硬化病変はマクロファージや細胞外脂質の蓄積が減少し,平滑筋細胞や線維成分の蓄積が増加することを確認した (Arterioscler Thromb Vasc Biol 1995; 15: 1938-1944; Br J Pharmacol 1999; 126:961-968; Atherosclerosis 2001; 157 (1):75-84 ;Atherosclerosis 2005; 178 (2):287-294 ;IAS Website March 23, 2005). この結果は,脂質低下療法によって動脈硬化病変が安定化し,急性冠症候群の発生予防に寄与することを示唆しており,大規模臨床試験の成績を裏付けるものである.
10) スタチン投与による血清コレステロール低下療法によって,動脈硬化病変のマクロファージからのMMPsや組織因子の発現が減少した.この結果はスタチンが線維性被膜の脆弱化を抑制し,血栓形成を抑制すること,および動脈硬化プラークの不安定化を抑制することを示唆している. (Circulation 2001; 103: 276-283; Circulation 2001; 103: 993-999;IAS Website March 23, 2005).
11) In vitro の実験から動脈硬化病変中の細胞に対するスタチンの効果は脂溶性スタチンと水溶性スタチンでは異なると考えられてきた.しかし,我々の研究では,動脈硬化病変中のマクロファージに対するスタチンの抑制作用は脂溶性スタチンのみならず水溶性性スタチンでも観察されたことから,in vivo においては水溶性スタチンも動脈硬化病変中の細胞の機能を抑制すると考えられる(Circulation 2001; 103: 993-999;IAS Website March 23, 2005).
12) 動脈硬化病変の平滑筋細胞の減少は動脈硬化病変を不安定化し,平滑筋細胞の増加は動脈硬化病変を安定化することを確認した (Atherosclerosis 2005 February; 178 (2):287-294 ; Arterioscler Thromb Vasc Biol 1995; 15: 1938-1944; Br J Pharmacol 1999; 126:961-968; Atherosclerosis 2001; 157 (1):75-84 ).
13) 冠動脈は動脈硬化の進展にしたがって代償性に拡張することが知られているが,代償性拡張に関する解析方法には冠動脈のサイズに関する個体差やtaperingなどの様々な問題が残されていた.これらの問題点を解決した新たな解析方法を考案して冠動脈に動脈硬化が自然発症するWHHLウサギを使用して解析した結果,従来の解析結果とは異なる結果を得た.すなわち,冠動脈の管腔狭窄率(cross-sectional narrowing)が10%を超えると冠動脈は代償性に拡大し始め,代償性拡張は管腔狭窄率70%まで認められた.この代償性拡張には血管壁ズリ応力が関係していることが示唆された. (Coronary Artery Disease 2004 Nov; 15(7): 419-426 ).
14) ヒト動脈硬化病変の病理組織学的研究においては平滑筋細胞は動脈硬化プラークの安定化に重要であると報告されているが,in vitro の実験では脂溶性スタチンは平滑筋細胞の増殖を抑制することが報告されている.しかし,脂溶性スタチンを使用した大規模臨床研究においては,いずれの脂溶性スタチンも心筋虚血イベントの発生を抑制することが報告されている.そこで,WHHLウサギを使用して,脂溶性スタチンの動脈硬化プラーク安定化作用について検討した.その結果,脂溶性スタチンの一つであるシンバスタチンは,水溶性スタチンのプラバスタチンと同様に,動脈硬化プラーク中の平滑筋細胞を減らすことなく,マクロファージや細胞外脂質蓄積を減少させ,動脈硬化プラークを安定化することを確認した.したがって,in vivo においては脂溶性スタチンも動脈硬化病変の不安定化を抑制すると考えられる.(Atherosclerosis 2005 February; 178 (2):287-294 ;IAS Website March 23, 2005)


5. 心筋梗塞を自然発症するWHHLMIウサギの開発( Arterioscler Thromb Vasc Biol 2003; 23 (7): 1239-1244; J Atheroscler Thromb 2004 Sep; 11 (4): 184-189)

1) 研 究 概 要
世界で初めて心筋梗塞を自然発症するウサギのモデルの開発に成功.
WHHLMIウサギと命名.
35月齢までの累積発症率は97%.
心臓に血液を送る冠動脈に進行した動脈硬化病変が発生し,冠動脈を閉塞することによって心臓の組織に血液が送られなくなり(虚血),心筋梗塞を発症.
心筋病変は広い範囲に及んでおり,急性心筋病変が陳旧性病変(時間が経過した古い病変)の周囲や間に認められ,冠動脈の動脈硬化病変は破裂しやすい不安定な病変に変化.
心電図では心筋梗塞特有の変化が認められる.
WHHLMIウサギの心筋病変はヒトの急性冠症候群 1) の心筋病変とは組織像が異なるが,その違いは冠動脈の動脈硬化病変の破裂の有無が関係していると考えられる.

2) 社会への貢献と今後の発展性
心筋梗塞の遺伝子治療や幹細胞の移植による心筋組織の再生,その他薬剤などによる治療方法の開発などへの貢献が期待できる.
急性冠症候群の原因と考えられる不安定な動脈硬化病変が発生していることから,急性冠症候群の危険因子や発症メカニズムに関する研究にも有用と考えられる.
インターネット版を見た英国のLeadDiscovery 2) が産学連携に値する研究として選抜(1万編の論文の中から100編を選抜).

3) 研究の背景
このモデルウサギは,1985年のノーベル賞(生理学医学部門)受賞研究(米国のGoldsteinとBrownによるコレステロール代謝の解明と治療への応用に関する研究)にも大きく貢献した遺伝性高脂血症ウサギ(WHHLウサギ,ワタナベウサギ)3) を遺伝改良 4) して開発.
遺伝子組換えマウスで心筋梗塞を発症するモデルがすでに報告されているが,ヒトの病態とは異なる.また,マウスでは脂質代謝,動脈硬化,脂質低下剤への感受性もヒトと異なり,心臓のサイズが小さいために研究に使用しにくいといわれている.ウサギの脂質代謝,動脈硬化,脂質低下剤への感受性はヒトに類似.

4) 方 法
  4-1) 開発方法
心臓に血液を供給している冠動脈に動脈硬化が自然発症するWHHLウサギ3) の中から心筋梗塞を自然発症する可能性が高いと判断されたウサギを選んで交配する選抜交配 4) を繰り返し,本モデル動物を開発した.
選抜基準は次の4項目である.
          @ 心筋梗塞を発症,
          A マクロファージが多く集まった冠動脈の動脈硬化病変を持つウサギ,
          B 冠動脈の管腔狭窄率が高いウサギ,
          C 成熟齢以後の血清コレステロール値が高いウサギ.

  4-2) 開発期間
開発には6年間の選抜交配(1994年〜1999年),8年間の解析を要した.現実には,本モデルの開発は1980年から1992年までの準備段階を礎にして完成した. 5)

  4-3) 心筋梗塞発症の確認
死後の心臓の病理組織像の解析: 201匹の心臓について約50切片/匹を解析
心電図変化の記録: 50匹につき12月齢以後毎月記録

5) 結 果
WHHLMIウサギはウサギで世界初の心筋梗塞を自然発症するモデル動物である. (Arterioscler Thromb Vasc Biol 2003;23 (7): 1239-1244; J Atheroscler Thromb 2004 Sep; 11 (4): 184-189 )
心筋梗塞は11月齢から自然発症し,35月齢までの累積発症率は97%.(Arterioscler Thromb Vasc Biol 2003;23 (7): 1239-1244)
心筋病変は左室壁に広く分布し,右壁や中隔壁にも認められ,心筋病変発生部位の責任冠動脈に重度の狭窄病変が認められる.(Arterioscler Thromb Vasc Biol 2003;23 (7): 1239-1244)
WHHLMIウサギの心筋病変は解剖学的に内膜下梗塞,貫壁性梗塞,心筋内梗塞,外膜側梗塞に分類される.(Arterioscler Thromb Vasc Biol 2003;23 (7): 1239-1244; J Atheroscler Thromb 2004 Sep; 11 (4): 184-189 )
多くのWHHLMIウサギでは新鮮心筋病変を伴う陳急性梗塞であり,一部に急性心筋梗塞と思われる所見が認められる.(Arterioscler Thromb Vasc Biol 2003;23 (7): 1239-1244; J Atheroscler Thromb 2004 Sep; 11 (4): 184-189 )
左冠動脈回旋枝の73%に狭窄率90%以上の病変が連続して認められる.(Exp Anim 2004; 53 (4): 339-346)
責任冠動脈には大きな脂質コアと薄い線維性皮膜からなる破綻しやすい不安定プラークが高率に認められる.また, プラーク内出血,石灰化,内皮細胞の消失,マクロファージによる内腔閉塞などが認められる.(Arterioscler Thromb Vasc Biol 2003;23 (7): 1239-1244; J Atheroscler Thromb 2004 Sep; 11 (4): 184-189 )
不安定プラークが高頻度に認められるにもかかわらずプラーク破綻はきわめて少数にしか認められないことから,プラークが破綻するためには他のトリガーが重要な働きをしていると考えられる.(Arterioscler Thromb Vasc Biol 2003;23 (7): 1239-1244; J Atheroscler Thromb 2004 Sep; 11 (4): 184-189 )
心筋梗塞発症発症直前にモニターした心電図では,ST上昇等の典型的な心電図変化が認められた.(Arterioscler Thromb Vasc Biol 2003;23 (7): 1239-1244)
血清総コレステロール値は選抜交配によって約200 mg/dl上昇し,12月齢で約900 mg/dl, 18月齢で約750 mg/dlに上昇したが,中性脂肪値は選抜交配前と同様で,12月齢以降約250 mg/dlであった.(Exp Anim 2004; 53 (4): 339-346)
血清総コレステロール値はメスで高値を示したが,冠動脈病変と大動脈病変の程度や心筋梗塞の発症率には性差は認められなかった.(Exp Anim 2004; 53 (4): 339-346)
以上の結果から,WHHLMIウサギは心筋梗塞の発症メカニズムの研究および治療方法の開発に有用であると考えられる.(Arterioscler Thromb Vasc Biol 2003;23 (7): 1239-1244); Commentary to the International Atherosclerosis Society, IAS Website (http://www.athero.org/comm-index.asp) September 5, 2003; J Atheroscler Thromb 2004 Sep; 11 (4): 184-189 )

6) 研 究 組 織
研究の統括: 塩見 雅志 (神戸大学医学部附属動物実験施設・助教授)
種畜の選抜: 塩見 雅志 (神戸大学医学部附属動物実験施設・助教授)
病理解析: 塩見 雅志 (神戸大学医学部附属動物実験施設・助教授)
病理解析: 伊藤 隆 (神戸大学医学部附属動物実験施設・助手)
病理解析: 范 江霖 (筑波大学 基礎医学系 病理・講師)
臨床的考察: 川嶋 成乃亮 (神戸大学大学院 医学系研究科 実践医科学領域 器官治療医学講座 循環呼吸器病態学・助教授)
心電図記録: 山田 悟士 (神戸大学医学部附属動物実験施設・技官)
血清脂質値測定: 山田 悟士 (神戸大学医学部附属動物実験施設・技官)
繁 殖: 田村 敏昌 (神戸大学医学部附属動物実験施設・技官)

(用語説明)
1) 急性冠症候群: 心臓の動脈(冠動脈)が血栓(血液が血管内で凝固したもの)などにより突然閉塞することにより発生する急性心筋梗塞,不安定狭心症,心臓突然死を含めた急性心筋虚血(突然心臓の筋肉に血液が送られなくなる)所見の総称.冠動脈の動脈硬化病変が破れることが引き金と考えられており,破れやすい動脈硬化病変を不安定病変という.
2) LeadDiscoveryLtd: 英国の産学連携を推進する産業社側の研究者による組織.
3) 1973年に突然変異ウサギを発見(渡辺 嘉雄 前教授),1980年に系統として確立(渡辺嘉 雄 前教授),1985年に冠動脈動脈硬化が自然発生するモデルに改良(渡辺嘉 雄 前教授),1992年に冠動脈動脈硬化病変が進行するモデルに改良(塩見 雅志 助教授).
4) 心筋梗塞に繋がる因子を持ったウサギを選んで交配する育種手法.
5) 実際は1981年から心筋梗塞を自然発症するモデルの開発を開始した(渡辺 嘉雄 前教授).第一段階は冠動脈に動脈硬化が発症するWHHLの開発で1985年まで(渡辺 嘉雄 前教授),第二段階は冠動脈の動脈硬化病変が進行するWHHLウサギの開発で1986年〜1993年まで(渡辺 嘉雄 前教授,塩見 雅志 助教授),第三段階が心筋梗塞を自然発症するWHHLMIウサギの開発1994年〜1999年まで(塩見 雅志 助教授).



6. その他
1) WHHLMIウサギの一部で認められる斜頸は,頭骨の発達異常に由来しており,感染症が原因ではないことを確認した (実験動物技術 2007; 42 (1): 1-8 ; ).


7. 他の研究機関が主に実施したWHHLウサギに関する主要な共同研究
1) 遺伝子組換え WHHL ウサギ: 筑波大学 Am J Pathol 2005 Oct; 167(4):1139-48; Cardiovasc Res 2005 Feb; 65(2): 524-534; J Biol Chem. 2004 Feb; 279 (9): 7521-7529 ; J Biol Chem 2002 Dec; 277 (49): 47486-47492; Ann N Y Acad Sci 2001; 947: 362-365; J Lipid Res 2000; 41: 1004-1012
2) 遺伝子治療: 国立精神神経センター,東北大学 Tohoku J Exp Med 2001; 193: 279-292
3) Heme oxygenase: 福島県立医科大学 Circulation 2001; 104 (15): 1831-1836
4) CSF: 東京大学,福島県立医科大学 Circulation 1999; 99: 2150-2156; Horm Metab Res 1997;29: 507-509; Ann NY Acad Sci 1995; 748: 630-633; Arterioscler Thromb 1994; 14: 1534-1541; Proc Soc Exp Biol Med 1992;200: 240-244; Atherosclerosis 1992; 93: 245-254
5) MCP-1: 九州大学 Arterioscler Thromb Vasc Biol 2003 Feb; 23 (2): 244-250
6) 酸化変性リポタンパク: 京都大学,帝京大学,神戸大学第一内科,第一病理 Arterioscler Thromb Vasc Biol 2002 Dec; 22 (12): 2049-53; J Lipid Res 2001; 42 (11): 1771-1781; J Clin Invest 1986; 77: 1460-1465
7) 動脈硬化: テキサス大学,福島医科大学,東邦大学 Arteriosclerosis 1983; 3: 87-101; Am J Pathol 1996; 149; 1831-1838; Interventional Neuroradiology 1998; 4: 183-186
8) 抗動脈硬化作用: 東京大学,ハーバード医科大学 J Clin Invest 1992; 89: 706-711; Proc Soc Exp Biol Med 1992; 200: 240-244; Atherosclerosis 1994; 106: 43-50; Circulation 2001;103: 993-999; Circulation 2001;103 : 276-283
9) 動脈硬化血管の弛緩反応: 滋賀医科大学, 神戸大学第一内科 Circulation 2001;103: 1289-1295; J Cardiovasc Pharmacol 2000;36: 622-630; Arterioscler Thromb 1992;12: 99-105; Circ Res 1983;53: 63-71
10) 冠血流量: 千葉大学 Jpn Circ J 2000;64: 971-976
11) インスリン−グルコース反応: 福岡大学 Eur J Drug Metab Ph 2001;26 (3): 185-192; Metabolism 1994;43: 360-366
12) 動脈硬化血管のレオロジー特性: 国立循環器病センター Biorheology 1988; 25: 147-156
13) 血圧コントロール: 香川医科大学,神戸大学第二生理学 J Vet Med Sci 1992;54: 983-987; J Vet Med Sci 1992;54: 669-673; Cardiovasc Res 1986;20: 195-200
14) リポタンパク代謝: 神戸大学第一内科,東京大学,テキサス大学,カリフォルニア大学,金沢大学,三共株式会社 Atherosclerosis 1994;108: 91-102; Proc Natl Acad Sci USA 1989;86: 665-669; J Lipid Res 1984;25: 246-253; J Biol Chem 1982;257: 7994-8000; Proc Natl Acad Sci USA 1982;79: 5693-5697; Proc Natl Acad Sci USA 1982;79: 3623-3627; Proc Natl Acad Sci USA 1982;79: 3305-3309; J Biol Chem 1981;256: 9789-9792; Proc Natl Acad Sci USA 1981;78: 2268-2272; Eur J Biochem 1981;118: 557-564; FEBS Lett 1980; 118: 81-84;
15) スタチンの脂質低下作用: 広島大学, 国立栄養研究所,三共株式会社 Biochim Biophys Acta 1995; 1259: 99-104; Japan J Pharmacol 1992;59: 65-70; Biochim Biophys Acta 1986;877: 50-60;
16) 動脈硬化病変の可視化: 浜松医科大学,京都大学,国立循環器病センター研究所 J Nucl Med. 2004 Jul; 45 (7): 1245-1250



8. 受 賞

2012年5月
Best Poster Award
Coronary Plaque Rupture, Relation of MMP-Positive Macrophages and Coronary Spasm.
Masashi Shiomi, Tsutomu Kobayashi, Norihisa Nitta, Akinaga Sonoda, Kiyoshi Murata, Ken-ichi Hirata, Takashi Ito, Tatsuro Ishida
80th European Atherosclerosis Congress, May 25-28, 2012 (Milan, Italy)

2006年9月
シーズアワード
心筋梗塞を自然発症するWHHLMIウサギの開発と動脈硬化研究への応用.
塩見雅志、山田悟士、田村敏昌、伊藤隆
(第2回神戸大学医学シーズフォーラム、2006年9月26日)

2001年11月
優秀選抜論文
心筋梗塞好発WHHLウサギ,病理所見と心電図所見
塩見 雅志,伊藤 隆,山田 悟士,田村 敏昌
(第18回日本疾患モデル学会, 名古屋大学シンポジオンホール、2001年11月9−10日)


共同研究者の受賞
2006年6月
First Place Award Outstanding Basic Science Investigations
Monitoring the therapeutic effect of probucol on vulnerable atherosclerotic plaques using [18F]FDG-PET.
Ogawa M, Magata Y, Kato T, Hatano K, Ito K, Ishino S, Mukai T, Shiomi M, Saji H
Society of Nuclear Medicine 53rd Annual Meeting, June 3-7, 2006 (Sun Diego Convention Center, Sun Diego, CA, U.S.A.)

The Blumgart Award
99mTc-ANTI-LOX-1 ANTIBODY FOR EVALUATING THE VULNERABILITY OF ATHEROSCLEROTIC LESIONS: COMPARATIVE STUDIES WITH 99mTc-ANNEXIN A5, IN MYOCARDIAL INFARCTION-PRONE WATANEBE HERITABLE HYPERLIPIDEMIC (WHHLMI) RABBITS
Seigo Ishino, Takahiro Mukai, Yuji Kuge, Noriaki Kume, Nozomi Takai, Nagara Tamaki, H William Strauss, Masashi Shiomi, and Hideo Saji
53rd Annual Meeting ? Society of Nuclear Medicine ? San Diego, California ? June 3-7, 2006

2005年4月
排尿障害の基礎部門で総会賞
過活動膀胱(OAB)の発症メカニズムに関する研究−WHHLウサギを用いての検討−
吉田正貴、桝永浩一、吉松美佳、稲留彰人、宮前公一、岩下 仁、上田昭一、竹屋元裕、堀内正公、塩見雅志
第93回日本泌尿器科学会総会(2005年4月13−16日,ホテル日航東京)

2005年11月
第二回日本核医学会研究奨励賞・最優秀賞
18F-FDG accumulation in atherosclerotic plaques: immunohistochemical and PET imaging study.
Ogawa M, Ishino S, Mukai T, Asano D, Teramoto N, Watabe H, Kudomi N, Shiomi M, Magata Y, Iida H, Saji H
J Nucl Med. 2004 Jul; 45 (7): 1245-1250

2004年7月
2004 First Place Award Outstanding Basic Science Investigations
18F-FDG accumulation in atherosclerotic plaques: immunohistochemical and PET imaging study.
Ogawa M, Ishino S, Mukai T, Asano D, Teramoto N, Watabe H, Kudomi N, Shiomi M, Magata Y, Iida H, Saji H.
J Nucl Med. 2004 Jul; 45 (7): 1245-1250




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