神戸大学医学部附属病院 肝胆膵外科

診療内容

ホーム > 診療内容 > 膵癌

膵癌

神戸大学膵癌診療の特色

神戸大学膵癌診療の特色

KOBE Pancreatic Cancer Board : KPCBのご紹介(神戸膵癌検討会)
~すべての膵癌の患者さんに安心して治療を受けていただくために~


「自分は内科と外科とどっちを受診するのがいいの?」
「内科でこういわれたのだけど外科の意見はどうなんだろう?」
「本当に何か別の治療法はないの?」

このような疑問を持ったことはありませんか?
膵癌診療・治療に関わる診療科は、消化器内科、放射線科、腫瘍内科、放射線腫瘍科、肝胆膵外科など多岐にわたり、それぞれに得意な領域を持っています。しかしながらそれぞれの診療科が高度な診療を行う一方で、患者さんにとっては先にあげたような疑問や不安もあるのではないかと感じていました。こうした問題を解消し、神戸大学を受診されたすべての膵癌の患者さんに、等しく高いレベルかつ安心できる診療、治療を提供することを目的とし、2009年8月、神戸大学膵癌検討会(KOBE Pancreatic Cancer Board : KPCB)を設立しました。

この検討会では膵癌の診療に携わるすべての科のスペシャリストたちが一同に集まり、神戸大学を受診されたすべての膵癌の患者さんの病状、画像や血液などの検査所見を詳細に検討し、最もよいと思われる治療方針を議論します。標準的な手術、抗癌剤、放射線治療はもちろんのこと、新しい治療の臨床試験や、粒子線治療などのオプション治療、病状に応じた緩和治療まで、あらゆる治療選択肢が各科のスペシャリストたちによって検討されます。すなわちどのような病状でも、どの診療科を受診しても、全ての膵癌の患者さんが、全ての診療科により、あらゆる治療選択肢を議論され、最適と思われる治療の提案を受けていただくことができます。そしてもちろん最終的には提案された選択肢をもとに、患者さんご本人が個々の医師とよく相談していただき、安心して治療方針をきめていただくことができます。

私たちは今後もさらにこのKPCBを充実させ、すべての膵癌の患者さんにさらに高いレベルで、かつ安心できる膵癌診療を提供することをめざしています。

膵臓について

膵臓は胃の後ろにある長さ20cmほどの細長い臓器で、右側は十二指腸に囲まれており、左の端は脾臓に接しています(図1)。右側は頭部と呼び、左端は尾部といいます。頭部と尾部との間の1/3ぐらいの大きさの部分を体部と呼びます。

膵臓の働き

膵臓の働きは、消化液の分泌(外分泌)とホルモンの分泌(内分泌)があります。膵臓から分泌される消化液は膵液といい、膵管という細い管を通して十二指腸に流れ出し、食べ物と混ざって消化していきます。一方、膵臓が分泌するホルモンの中では、特に血糖を調節するホルモンが重要です。血糖を下げるインスリンというホルモンは体の中で膵臓しかつくっておらず、この機能が低下すると糖尿病になります。また、血糖を上げるホルモン(グルカゴン)や胃腸の働きを調節するホルモンも分泌しています。

膵臓

ページトップへ戻る

膵癌について

膵臓から発生したがんのことを一般に膵がんと呼びます。膵臓にできるがんのうち90%以上は膵液を運ぶ膵管の細胞から発生する膵管がんで、通常、膵がんといえばこの膵管がんのことをさします。

膵癌の疫学

わが国では、毎年22,000人以上の方が膵がんで亡くなっており、癌の臓器別死亡数では5位となっています。以前は日本の膵がんの死亡率は低いレベルでしたが、1960年代から80年代後半まで増加して欧米諸国並みになり、横ばいに転じました。現在わが国では、毎年22,000人以上の方が膵がんで亡くなっています。死亡率は、男性のほうが高く、女性の約1.7倍です。年齢別にみた膵がんの罹患(りかん)率は60歳ごろから増加して、高齢になるほど高くなります。

膵癌の原因・リスクファクター

膵がんになる原因は、他の多くの癌と同様わかっていません。また、ほとんどの場合、遺伝も関係ないようです。唯一確定しているリスク因子は喫煙です。また、食事要因としては、高脂肪食や肉摂取がリスクを増加させ、また野菜・果物摂取がリスクを低下させる可能性が示されています。コーヒーや飲酒、糖尿病に関してもリスクがあがるという報告がありますが、結論は出ていません。

膵がんの症状

膵がんは初期の段階ではほとんど症状はありません。これが発見を難しくしている大きな要因で、症状が出たときにはかなり進行しているケースも少なくありません。初期の症状で多いのは胃のあたりや背中が重苦しいとか、なんとなくお腹の調子がよくないとか、食欲がないなどという漠然としたものです。また、場所や大きさによって、黄疸(尿や結膜(白目の部分)、皮膚が黄色くなる)、背部痛、腹痛、体重減少、糖尿病の悪化などの症状が現れますが、もちろんこれらの症状があれば必ず膵がんということではありません。

膵がんの診断

膵がんは身体のまん中にあり、胃・十二指腸・小腸・大腸・肝臓・胆嚢・脾臓などに囲まれているため、がんが発生しても見つけるのは簡単とはいえません。
画像検査としては

  • 腹部エコー(超音波検査)
  • 腹部CT(造影剤を使用することが望ましい)
  • 腹部MRI
  • ERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影)
  • FDG-PET検査

などがあります。中にはからだに少し負担のかかる検査もありますので、必要に応じてからだの負担が少なく、簡便なものから行います。また、血液検査では、膵の酵素、肝胆道系の酵素、腫瘍マーカーなどが参考になりますが、確定的ではありません。
これらの検査でがんの疑いがあれば、確定診断のため、病理組織や細胞診断を行います。

  • 超音波内視鏡下針生検
  • 膵管擦過細胞診、膵液細胞診

膵臓は胃や大腸と違い組織を採取するのが難しく、専門的な施設の方が診断がつきやすいといえます。 早期発見が最も重要ですので、どうしたら早く発見できるかという研究が意欲的に続けられています。

ページトップへ戻る

病期(ステージ)

がんがどの程度進んでいるかをあらわすには病期(ステージ)というものが使われます。病期はおおまかにIからIVの4段階に分類されています。ただし、日本の膵臓学会が定めたものと国際的に使われているもの(UICC分類)では内容が多少異なっています。現在は両方とも使われているので、それぞれについて簡単に説明します。

<日本膵臓学会> 第6版 2009年度

Ⅰ期 大きさが2cm以下で膵臓の内部に限局している。
Ⅱ期 がんは膵臓の内部にとどまっているが、大きさが2cm以上であるか、膵臓に近いリンパ節(第1群)に転移がある。
Ⅲ期 がんは膵臓の外へ少し出ているが、リンパ節転移はないか、膵臓の近くまで(第1群)に限られている。または、がんは膵臓の内部にとどまっているが、リンパ節転移は少し膵臓とはなれたところ(第2群)まである。
Ⅳ期 がんが膵臓の周囲の臓器・器官を巻き込んでいるか、離れた臓器(肝臓や肺など)に転移がある。

<UICC分類> 第6版 2002年

Ⅰ期 がんが膵臓の内部にとどまり、転移はない。
Ⅱ期 がんは膵臓の内部にとどまっているが、周りのリンパ節に転移がある。がんは膵臓の外へ少し出ているが、周りの主要動脈まで及んでいない。
Ⅲ期 膵臓の腫瘍がまわりの主要動脈まで及んでいる。
Ⅳ期 膵臓から離れた臓器(肝臓や肺など)に転移がある。

ページトップへ戻る

治療

(1)手術

現在のところ、膵がんを完全に治す方法は手術による切除しかありません。ですから、がんがある程度膵臓の周りにとどまっているとき(ステージⅣの一部まで)は、できるだけ手術による切除を行います。

膵頭十二指腸切除

病変が膵臓の頭側(十二指腸側)にある場合の標準術式です。頭側に腫瘍がある場合、通常膵臓のみを切除することはできません。胃の一部から十二指腸、胆のうと下部胆管、膵臓の頭側3分の1から2分の1程度を一塊として切除します。切除する臓器が多い分、再建も多く複雑で、消化器癌の手術のなかでは最も難易度が高い手術の一つと言えます。最近ではできるだけ胃を温存する術式(幽門輪温存膵頭十二指腸切除)も多く選択されます。

膵体尾部切除(脾合併切除)

病変が膵臓の尾側(脾臓側)にある場合の標準術式です。こちらは膵臓の左側半分を切除しますが、リンパ節転移にそなえて脾動静脈や脾臓周囲のリンパ節を切除する必要があるため、通常脾臓とともに切除します。良性腫瘍や悪性でも初期のものについては脾臓を温存することも可能です(脾温存膵体尾部切除)。

膵中央切除、膵部分切除

明らかな浸潤がんの場合、上記2つの手術が標準術式となりますが、悪性度の低い腫瘍の場合、膵機能をできるだけ温存するために、膵臓の真ん中だけを切除したり(膵中央切除)、膵臓の一部のみを切除したりすることも可能です。切除する範囲は少ないとはいえ比較的めずらしい術式で、専門的な施設以外では行っていないこともあります。

腹腔鏡補助下膵体尾部切除(脾温存または脾合併切除)

最近胃や大腸のがんでは腹腔鏡を用いた手術が広まっています。腹腔鏡を用いる利点はなんといっても傷が小さくてすむため、からだへの負担が少なく、美容的にも優れているところです。しかし、安全性や切除範囲の制約などの問題もあり、膵臓の手術では腹腔鏡を用いた手術は保険適応となっていません。当科では悪性度の低い疾患に対し、先進医療として腹腔鏡補助下膵切除を行っています。

ページトップへ戻る

(2)術後補助化学療法

治癒をめざしてできる限り切除しますが、膵がんは悪性度が高く、切除後に再発、転移をきたすこがもあります。これらを少しでも抑制するために、悪性度や進行度によって術後約6ヶ月間、TS-1による化学療法を行うことが勧められています。
当科では現在、術前化学療法との比較試験を行っています。
詳細は本HPの臨床試験・先進医療についてをご覧下さい。

(3)化学療法

ステージ4b(がんが肝臓や肺など他臓器に転移している場合や、広範囲なリンパ節に転移している場合)では手術によって切除することはできません。この場合、化学療法を行います。
標準的にはゲムシタビン、エルロチニブ、TS-1といった抗がん剤が単独あるいは併用で用いられます。現在のところ、癌を完全に消失させることは困難ですが、最近新しい薬剤の開発や組み合わせが研究されおり、近い将来治療薬の選択肢が増える見通しです。
当科では現在、ゲムシタビン不応膵癌に対する治験を行っています。
詳細は本HPの臨床試験・先進医療についてをご覧下さい。

(4)化学放射線治療

遠隔転移はないが切除できないがん(局所進行切除不能膵がん)に対しては、化学療法と放射線治療を併用して治療することもあります。以前は併用すると副作用が多いなどの問題もありましたが、放射線照射の技術も進歩し、副作用の低減もはかられています。

ページトップへ戻る

膵手術症例

膵手術症例

浸透生膵管癌切除例生存曲線

浸透生膵管癌切除例Stage別生存曲線(2007-2009)

ページトップへ戻る

Copyright (C) 2009 神戸大学医学部附属病院 肝胆膵外科 All Rights Reserved.