スペイン短期留学記
免疫内科 三崎健太

2011年2月16日~2011年3月7日までスペインはバルセロナへ短期留学をさせて頂きました。今回の留学の目的は、リウマチ性疾患の細胞レベルでの病態生理の研究及びヨーロッパ各国で盛んに行われている関節超音波の技術習得でありました。関西国際空港から飛行機を乗り継いで約18時間。地中海に臨むバルセロナ市に到着したのはすっかり夜でしたが、神戸と同様に夜景が非常に綺麗な街でありました。1992年に夏のオリンピックが開催された都市ともあって、空港は非常に設備が素晴らしく、交通の便もよかったため到着が夜ではありましたが迷うことなく目的地へ辿り着くことができました。
2月17~19日まではバルセロナ大学医学部で行われた関節超音波学会に参加しました。日本の学会では経験したことのない解剖献体を用いての関節エコーの講義・実習と付着部炎、滑膜炎等のリウマチ性疾患の細胞レベルでの追及が大変印象的でした。この学会にはヨーロッパ各国、アメリカ合衆国、カナダ、中東、ロシアのリウマチ内科専門医、整形外科医、将来リウマチ内科を志望する研修医が参加しており各国のリウマチ医の診療体制や研究体制等も含め多くの討論ができたことが非常に勉強になりました。何より一番驚いたことはヨーロッパ各国の関節超音波の技術とリウマチ専門医の解剖学の知識の豊富さでした。私も2006年頃より関節超音波に関心を持ち、関節リウマチの症例はある一定の症例数を経験しこの学会に臨みました。しかし、彼らのレベルは桁違いでした。リウマチ専門医は内科であることが多いですが、まるで整形外科医のようにあらゆる筋骨格系の内容に精通しており、関節超音波ガイド下にリウマチ内科医自らあらゆる関節へ関節注射を施行している現状はまさに目から鱗でありました。今後日本のリウマチ内科医にも求められる重要な課題であると実感しました。
関節超音波学会後はInstituto Poal de Reumatologia、Hospital de Platoにおいて関節超音波のトレーニングとリウマチ専門外来での研修を約2週間行いました。直接指導して下さったのはInstituto Poal de ReumatologiaのProf.Ingrid Möller, Dr.David Bong, Hospital de Plato整形外科のDr.Albert Armanの3人で、朝8時から夜9時まで連日、熱血的な指導をして頂きました。来院する患者数は1日15~20人程度ですが、聴診と同様に必ず全員に関節超音波を行い一人30分程かけて診療をしていました。また、整形外科医と合同で行う外来も週に数回あり治療方針等の決定や関節超音波の動的評価の際には大変勉強になりました。しかし、神経・腱・靭帯といった関節包以外の評価もかなり多かったので時差ボケと闘いながら帰宅してひたすら解剖書と向き合う日々が続きました。その成果、約200症例の関節超音波を留学中に経験させて頂きました。
せっかくバルセロナに赴いたので休日は自転車を借りてバルセロナ市内を周りました。その中でもサクラダ・ファミリア、オリンピック記念館、本場ヨーロッパのサッカー公式戦が大変魅力的でありました。また、スペインの人々の陽気な性格と親切心は今でも脳裏に焼き付いており、片言ではありますがスペイン語を現地で勉強できたのも彼らの温かい指導によるものでした。
3週間という短期間ではありましたが内容の充実した留学であり、今後日本にも必ず我々の技術を普及してほしいとの使命を与えられ帰国しました。海外の「褒めて伸ばす」の精神に基づいた教育方法も身を持って実感し、辛かった日々もありましたが指導してくれたスタッフに助けてもらいながら何とかやり遂げることができました。現地にて「You are SAMURAI!」というフレーズでよく呼ばれましたが、異国にて侍の根性で頑張れたのも英語発表を始めとしたグローバルCOEのプログラムで鍛えて頂いた賜物であると感謝しております。今後もこのプログラムで後輩達が海外留学にて飛躍できることを願っております。本当によい機会を与えて頂きありがとうございました (Muchas Gracias!!)。