米国臨床腫瘍学会(ASCO)報告記 Hironobu Minami
2009年5月29日から6月2日にオーランドで開催されたASCOの年次総会に
出席してきました。この学会は教科書を書き換えるデータが毎年報告さ
れるため、目を離せない学会です。私は1990年に最初に参加して以来、
1993年からは1年も欠かさず参加しています。今年は新型インフルエンザ
の影響で米国から帰国後は10日間の自宅“謹慎”のお達しがでましたが、
ASCOの国際委員会の委員を務めていることもありますし、何よりもがん
プロでの講義や実習で教育しなければならない情報を収集しなければな
らないために“謹慎”覚悟で行くつもりにしていました。幸いなことに
出発直前になって、“謹慎”は不要となりましたので、日常業務への支
障は最小限で済みました。ちなみに米国ではマスクをしている人は一人
も見かけませんでした。
今年の一番の目玉は、PARP阻害薬の有効性をホルモン受容体もHER2も
過剰発現していない乳がんで示したデータだと思います。副作用がほと
んどなく大きな有効性が示唆されました。これはランダム化第II相試験
の結果であり、今後の第III相試験で最終的に確認しなければなりませ
んが、確実に証明されると予想します。ホルモン受容体もHER2も過剰発
現していない乳がんではBRCA1が欠失していることがあり、このような
腫瘍ではPARP阻害薬は理論的に効くはずであり、PARP阻害薬の成功は分
子生物学の進歩の成果と言えます。また、今まで良い薬物療法がなかっ
た消化管の神経内分泌腫瘍の治療法が確立し、甲状腺がんや特定の遺伝
子変異を伴う比較的珍しい腫瘍の治療も開発されています。分子生物学
の進歩が臨床に還元されつつあると言えるでしょう。
新しい治療法ばかりでなく、従来の治療法をチューニングするような
データも多数発表されました。この中には明日からの医療を変えなけれ
ばならないものも含まれます。これらの新しい知見をがんプロの講義や
実習の中で伝えていきたいと思います。
多くの方ががんプロで学び日本のがん医療を担う医療従事者になって
いただくことを期待しています。
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