上まぶたの治療

二重まぶたの手術について

まぶたの特徴

まぶたには眼球を保護するという大きな役割があります。単に強い光や、外力から守るだけでなく、涙やワックス成分を行き渡らせることで、埃を取り除いたり、乾燥を予防する重要な役割も担っています。例えて言うと、お店のシャッターのように窓ガラスを守るだけでなく、車のワイパーのように雨粒を拭き広げるような仕事もしています。ここからはまぶたの構造をその働きと一緒に解説します。

まぶたの構造

まぶたの一番縁側には、瞼板という軟骨のように硬い板が、まぶたの縁に沿って端から端まで横たわっています。瞼板の中にはマイボーム腺というものがあり、脂分を分泌しています。瞬きのたびに、この脂分が涙と一緒に眼球の表面に行き渡って乾燥から守ります。その瞼板にまぶたを持ち上げる筋肉である眼瞼挙筋が付着しています。眼瞼挙筋は瞼板の近くでは、挙筋腱膜と呼ばれる非常に薄い膜になって付着しています。「眼瞼挙筋が収縮する→挙筋腱膜が引き上げられる→瞼板が持ち上げられる→まぶたが持ち上げられる」という一連の流れでまぶたは開きます。挙筋腱膜の形状には個人差が大きく、挙筋腱膜が枝分かれして皮膚と連絡している人や、その連絡が弱い人など様々です。二重まぶたと一重まぶたの違いの原因の一つとなっています。

さらに細かいところまで見てみると、眼瞼挙筋の裏にはミュラー筋という筋肉が走行しています。ミュラー筋も眼瞼挙筋と一緒に働いて、まぶたを開ける筋肉ですが、眼瞼挙筋とは異なる神経の支配を受けています。あくまでまぶたを開ける主役は眼瞼挙筋であり、ミュラー筋の役割はその補助的なものと考えられていますが、ミュラー筋が障害されると、まぶたの違和感や痛みを生じます。ひどい場合には眼瞼痙攣を生じて、まぶたを開けることができなくなることもあり、重要なものと考えられています。

次に、まぶたの皮膚の表面から構造を解説します。

まぶたの皮膚は非常に薄く、すぐ下に眼輪筋という筋肉が、その名のとおり上まぶたと下まぶたを取り囲む輪のように走行しています。ただし上まぶただけを見ると、横向きに走行しているように見えます。

眼輪筋の下には、挙筋腱膜が折れ返って袋状につながった眼窩隔膜という非常に薄い膜があります。眼窩隔膜と挙筋腱膜の間には眼窩脂肪が包み込まれています。眼窩隔膜と眼輪筋の間にはROOF(眼輪筋脂肪)や隔膜前脂肪と呼ばれる脂肪の層があります。美容外科的には「厚ぼったいまぶた」の原因と考えられることがあります。

一重まぶたと二重まぶたの違い

一重まぶたの構造

挙筋腱膜と皮膚の連絡が弱い人のまぶたは、挙筋腱膜の動きが皮膚に伝わりません。「眼瞼挙筋が収縮→挙筋腱膜を引き上げ→瞼板を引き上げ→まぶたが開く」という流れですが、挙筋腱膜と皮膚の間に連絡が無いため、皮膚には変化が起こりません。つまり一重まぶたです。

二重まぶたの構造

一方で挙筋腱膜と皮膚の連絡が強い人のまぶたは、挙筋腱膜の動きが皮膚に伝わります。「眼瞼挙筋が収縮→挙筋腱膜を引き上げ→瞼板を引き上げ→まぶたが開く」という流れは同じです。しかし、挙筋腱膜と皮膚の間に連絡があるため、収縮した眼瞼挙筋の力が皮膚にまで伝わり、皮膚も引き上げられます。その部分で皮膚が折れ曲がって、皮膚が覆いかぶさって、段差が生まれます。 これが二重まぶたです。

二重まぶたの手術

「二重まぶたを作る=まぶたを開いた際に皮膚が一緒に引き上げられる構造を作る」ということはお分かりいただけたかと思います。

ここからは、切開法と埋没法について解説をします。

切開法(瞼板法)

切開法(瞼板法)は、皮膚を切開して、皮膚の裏側の組織を一部切除し、皮膚と瞼板を縫合して二重を作る方法です。

非常に取れにくく、しっかりとした重瞼線を作成できるとこが長所ですが、まぶたを閉じた状態でも縫い付けた部位が凹んでしまい、目立ちやすいことがあるのが欠点です。

埋没法

埋没法は、切開せずに小さな針穴から糸を通して、皮膚と瞼板を連結させて二重を作る方法です。

糸を締め上げることなく、余裕を持たせるように工夫することで、まぶたを閉じた際には凹まないように仕上げることができます。

埋没法は皮膚を切開しないためダウンタイムの点で非常に優れた方法です。しかしながら眼瞼挙筋の力が弱い方には不適であったり、すべての方に適した方法ではありません。

また糸の通し方には色々な方法がありますが、その原理を理解して選択することが非常に重要です。

切開法(挙筋法)

挙筋法は、当院で切開法を行う場合に主に行っている方法です。眼窩脂肪を取り囲んでいる眼窩隔膜を用いて、皮膚と挙筋腱膜を連結させて二重を作ります。生まれつきの二重まぶたに近い構造を作ることを目的としています。

この切開法は、まぶたを閉じても凹みはほとんどない仕上がりが期待できるだけでなく、まぶたを開く際の眼瞼挙筋の収縮が挙筋腱膜を介して直接伝わるため、皮膚がしっかりと引き上げられて、自然な深い二重まぶたを作ることができます。ただし皮膚と挙筋腱膜を縫合した部位が外れる可能性はゼロではなく、もし外れてしまった場合には、重瞼線も消えてしまうため、再手術が必要になります。

美容科の中でも、一番たくさんの患者さんが手術を受けておられるであろう二重まぶたの手術ですが、しっかりと説明を受けて、理解した上で、術式を選択されるようお願いします。

手術詳細

二重埋没法

二重埋没法

二重埋没法は、自然な二重を形成するために行う手術です。

二重のラインができるように皮膚は切らずに小さな穴を介して細い縫合糸をまぶたに埋没させ、まぶたの組織に固定して二重を作ります。

切開を伴わないため出血リスクが低減され、術後の腫れや痛みが最小限に抑えられます。

切開をしたくない方、ダウンタイムの期間を最小限に抑えたい方に有効です。

二重切開法

二重切開法

二重切開法は、より恒久的な二重を形成するために行う手術です。

二重のラインに沿って皮膚を切開し、眼窩隔膜を切開して、眼窩隔膜の端を皮膚の裏側に縫い付けて二重を作ります。

埋没法と比べて、より希望に沿った二重ラインの形成、長期的な効果の維持、重いまぶたの修正が期待できます。

「まぶたを閉じた状態での自然さ」と「まぶたを開く途中の自然さ」にこだわっています。

眼瞼下垂

眼瞼下垂

眼瞼下垂手術は、様々な原因によって、上眼瞼が正常な位置よりも下に垂れ下がり、瞼が開きにくくなった状態を修正するために行う手術です。

その原因には、先天性(生まれつき瞼を開く力が弱い)、後天性(生まれつきの原因ではなく、他の原因で眼瞼下垂になった)に分類できます。

症状に応じて適切な治療を行います。

眉下皮膚切除

眉下皮膚切除

眉下皮膚切除は、上眼瞼のたるみを改善するために行う手術です。

眉の直下の余分な皮膚を部分的に切除し、まぶたを持ち上げることで上眼瞼のたるみを改善します。

切開は眉毛の直下または眉毛内に隠れるように行うため、術後の傷は最小限に抑えられます。

上眼瞼の重さによる視野の妨げがある方、深い眉間のしわや上眼瞼のたるみによる外見上の懸念がある方に有効です。

眉下皮膚切除の注意点

施術時間
約60分
洗顔・入浴・メイク
洗顔・シャワー・メイクは患部を避けて当日から、入浴・患部のメイクは抜糸後(約1週間後)より可能
ダウンタイム
目立つ腫れは1週間程、内出血は1~2 週間で引いていき、約3ヶ月で自然な状態になります。
合併症・副作用
感染/血腫/内出血/腫れ/浮腫み/傷跡/左右差/まぶたのひきつれ/眉毛形態異常/毛嚢炎/白目や角膜の損傷/眼球の火傷

眉毛リフト

眉毛リフト

眉毛リフトは、上眼瞼のたるみを改善するために行う手術です。

眉の上の余分な皮膚を部分的に切除し、眉を引き上げることで上眼瞼のたるみを改善します。

眉毛のラインに沿って縫合を行うため、術後の傷は最小限に抑えられます。

年齢とともに自然に発生するたるみによって眉毛の位置が下がってしまった方に有効です。

眉毛リフトの注意点

施術時間
約60分
洗顔・入浴・メイク
洗顔・シャワー・メイクは患部を避けて当日から、入浴・患部のメイクは抜糸後(約1週間後)より可能
ダウンタイム
目立つ腫れは1週間程、内出血は1~2 週間で引いていき、約6ヶ月で自然な状態になります。
合併症・副作用
感染/血腫/内出血/腫れ/浮腫み/傷跡の段差・凹み/左右差/まぶたのひきつれ/眉毛形態異常/まぶたの窪み・三重/二重ラインの変化/毛嚢炎

上瞼たるみ取り

上瞼たるみ取り

上瞼たるみ取りは、上瞼のたるみを改善するために行う手術です。

上眼瞼の過剰な皮膚、脂肪、および筋肉を除去し、必要に応じて眼瞼の輪郭を再形成することにより、上瞼のたるみを改善します。

切開は、上瞼の自然な折り目で行うため、術後の傷跡はほとんど目立ちません。

年齢に伴う皮膚の弛緩や脂肪の蓄積により重く垂れ下がった上瞼を修正し、視野の障害を解消、より若々しい外見を取り戻すことを目的としています。

上瞼たるみ取りの注意点

施術時間
約40分
洗顔・入浴・メイク
洗顔・シャワー・メイクは患部を避けて当日から、入浴・患部のメイクは抜糸後(約1週間後)より可能
ダウンタイム
目立つ腫れや内出血は1週間程で引いていき、約1~2ヶ月で自然な状態になります。
合併症・副作用
感染/血腫/内出血/腫れ/浮腫み/傷跡/二重幅の左右差/二重幅の間の皮膚のたるみによる三重/二重ラインの消失

目頭切開

目頭切開

目頭切開は、目の横幅を広げるために行う手術です。

目頭部にある余分な皮膚や蒙古ひだを切除・調整することで、目と目の間の距離を短縮し、目の大きさを視覚的に拡大します。

適切なアフターケアにより、術後の傷は時間の経過とともに目立たなくなります。

目が小さく、大きく見せたい方や目と目の間隔が広いと感じる方に有効です。

目頭切開の注意点

施術時間
約40分
洗顔・入浴・メイク
シャワーは当日から、洗顔・メイクは患部を避け当日から、入浴は翌日からぬるま湯で可能。患部の洗顔・メイクは抜糸後(約1週間後)から可能。
ダウンタイム
腫れは7日程度、内出血は1~2週間で引いていき、約3ヶ月で自然な状態になります。
合併症・副作用
感染/血腫/内出血/腫れ/浮腫み/傷跡/左右差/目頭形態異常/涙管、白目や角膜の損傷/眼球の火傷

目尻切開

目尻切開

目尻切開は、目の横幅を広げるために行う手術です。

目尻のきわの皮膚を数ミリ切開して目尻を延長することで、目の大きさを視覚的に拡大します。目尻の位置の調整、目元のカーブの強調、目元のバランスの改善が期待できます。

適切なアフターケアにより、術後の傷は時間の経過とともに目立たなくなります。

ツリ目気味の方、目が細く見える方に有効です。

目尻切開の注意点

施術時間
約40分
洗顔・入浴・メイク
シャワーは当日から、洗顔・メイクは患部を避け当日から、入浴は翌日からぬるま湯で可能。患部の洗顔・メイクは抜糸後(約1週間後)から可能。
ダウンタイム
腫れは7日程度、内出血は1~2週間で引いていき、約3ヶ月で自然な状態になります。
合併症・副作用
感染/血腫/内出血/腫れ/浮腫み/傷跡/左右差/目尻形態異常/まつ毛が抜ける、切れる、逆まつ毛になる/目尻ラインが段差になる/糸の突出/白目や角膜の損傷/眼球の火傷

蒙古ひだ形成

蒙古ひだ形成

蒙古ひだ形成は、目の内側にある目頭のピンク色の部分を隠すように覆いかぶさっている皮膚(蒙古ひだ)を形成する手術です。

目頭を切開し、皮膚を折り畳んで縫合することにより蒙古ひだを形成します。

蒙古ひだの有無や大きさには個人差があり、生まれつき少ない人や、目頭切開をおこなった結果、寄り目になりすぎてしまった人が修正するのに有効です。

蒙古ひだ形成の注意点

施術時間
約40分
洗顔・入浴・メイク
シャワーは当日から、洗顔・メイクは患部を避け当日から、入浴は翌日からぬるま湯で可能。患部の洗顔・メイクは抜糸後(約1週間後)から可能。
ダウンタイム
腫れは約7~10 日程度、内出血は1~2 週間程で引いていき、約6ヶ月で自然な状態になります。
合併症・副作用
感染/血腫/内出血/腫れ/浮腫み/傷跡/左右差/まぶたのひきつれ/目頭形態異常/二重ラインの変形/糸の突出/白目や角膜の損傷/眼球の火傷

脂肪注入

脂肪注入

上まぶたの窪みやしわを改善する注入療法です。皮膚を内側からボリュームアップさせます。

患者様ご自身の腹部や太ももなどから脂肪を採取し、遠心分離法で純化して適切な部位に注入します。安全性が高く、生着した脂肪は半永久的な効果が期待できます。

目元にボリュームを与え、より若々しい目元の印象を与えます。

脂肪注入の注意点

施術時間
約60分
洗顔・入浴・メイク
当日から可能
ダウンタイム
腫れや浮腫みは2~3日程で引いていき、内出血は1~2週間程度で治まります。
合併症・副作用
感染/内出血/腫れ/浮腫み/左右差/凹凸や硬さ/血流障害/アレルギー/しびれ

ヒアルロン酸注入

ヒアルロン酸注入

上まぶたの窪みやしわを改善する注入療法です。皮膚を内側からボリュームアップさせます。

ヒアルロン酸は、元々人間の体内に存在している成分です。安全性が高くアレルギー症状が出ることがほとんどありません。

一般的に4ヶ月から1年程度持続します。永久的なものではなく時間とともに徐々に肌に吸収されていくので、少しずつ元の状態に戻ります。効果を長持ちさせたい場合は、効果が切れる前に再度注入すると長く保つことができます。

ヒアルロン酸注入の注意点

施術時間
約30分
洗顔・入浴・メイク
当日から可能
ダウンタイム
腫れや浮腫みは2~3日程で引いていき、内出血は1~2週間程度で治まります。
合併症・副作用
感染/内出血/腫れ/浮腫み/左右差/凹凸や硬さ/血流障害/アレルギー/しびれ