研究内容

私たちは、ゲノム解析・プロテオミクス・細胞生物学・糖質生物学・遺伝子工学など様々な研究手法を用いて、筋ジストロフィーやパーキンソン病の病態・原因遺伝子の機能解明、治療法の開発に取り組んでいます。また、記憶・知性に関わる遺伝子群の同定を試み、分子レベルでの高次脳機能の解明にも挑戦します。

I 筋ジストロフィーの病態解明と治療法の開発、糖鎖異常筋ジストロフィーの分子基盤

筋ジストロフィーは、単一遺伝性の疾患で、原因遺伝子や遺伝形式によって30種以上の病型に分けられます。現在のところ、筋ジストロフィーに対する有効な治療法は存在せず、原因遺伝子の同定、病態解明、トランスレーショナル研究など、一刻も早い研究の進展が望まれています。私たちは、分子遺伝学、生化学、細胞生物学、糖鎖生物学など様々な手法と最先端技術を駆使し、病態や発症機序の解明、治療法の構築に取り組んでいます。また、独自に開発した筋ジストロフィーモデルマウスや細胞を用いた治療実験(核酸化合物治療、遺伝子治療、細胞治療、糖鎖治療)を通し、トランスレーショナル研究や治験に必要な基盤情報を蓄積することにも重点をおいています。最近では、福山型先天性筋ジストロフィーの発症機序を明らかにし、まったく新しい治療への道筋を拓くことに成功しました。

詳しくは「筋ジストロフィーの病態解明と治療法の開発」

また、福山型筋ジストロフィーをはじめとする“糖鎖異常型筋ジストロフィー”という新しい疾患概念の樹立にも携わってきました。現在は、基礎-臨床融合という革新的な体制の下、難病の克服を目指して、様々な角度から研究を進めています。

詳しくは「糖鎖不全型筋ジストロフィーの分子基盤」

<主な業績>
  • Taniguchi-Ikeda M, et al, Pathogenic exon-trapping by SVA retrotransposon and rescue in Fukuyama muscular dystrophy. Nature 478:127-131, 2011
  • Kanagawa M, et al, Residual laminin-binding activity and enhanced dystroglycan glycosylation in novel model mice to dystroglycanopathy. Hum Mol Genet 18:621-631, 2009
  • Kanagawa M, et al, Molecular recognition by LARGE is essential for expression of functional dystroglycan. Cell 117:953-964, 2004
  • Yoshida A, et al, Muscular dystrophy and neuronal migration disorder caused by mutations in a novel glycosyltransferase, POMGnT1. Dev Cell 1:717-724, 2001
  • Kobayashi K, et al, An ancient retrotransposal insertion causes Fukuyama-type congenital muscular dystrophy. Nature 394:388-392, 1998

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II 神経変性疾患~パーキンソン病とアルツハイマー病を中心に

現在の我が国では、本格的な少子高齢化社会を迎え、アルツハイマー病、パーキンソン病といった神経変性疾患は益々増えていくことが予想されます。アルツハイマー病やパーキンソン病の多くは、環境因子と遺伝因子により発症する多因子性疾患で、その疾患感受性遺伝子(危険因子)の同定が重要な課題です。また、パーキンソン病は発症年齢や臨床症候、経過、薬剤の反応性が多様であることが特徴で、このことは患者さんの階層化と患者さん一人一人に最適なオーダーメイド医療が可能であることを意味しています。私たちは神経変性疾患の疾患感受性遺伝子の同定とオーダーメイド医療確立を目指しています。このプロジェクトは、神経内科学教室と神経内科専門医らとの共通カンファレンス・共同研究をふくむ臨床・基礎一体型の体制で行っています。

<主な業績>
  • Satake W, et al, Genome-wide association study identifies common variants at four loci as genetic risk factors for Parkinson's disease. Nature Genet 41:1303-1307, 2009
  • Sidransky E, et al, Multicenter analysis of glucocerebrosidase mutations in Parkinson's disease. N Engl J Med 361:1651-1661, 2009
  • Mizuta I, et al, Multiple candidate gene analysis identifies a-synuclein as a susceptibility gene for sporadic Parkinson's disease. Hum Mol Genet 15:1151-1158, 2006

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III 高次脳機能(記憶・知性)にかかわる遺伝子

ヒトとチンパンジーはほとんど塩基配列が同じなのに、なぜヒトは知能、言語をもつのでしょうか?key moleculeは一体何でしょうか?私たちはこの疑問の解決にむけて、脳の各部位の遺伝子発現、エピジェネティクス、遺伝子多型解析などを通じて研究を行っています。また分子遺伝学、ゲノム解析を用いて精神発達遅滞に関与する遺伝子、さらに多因子遺伝であるgeneral cognitive ability (gファクター:知性)などに関するヒト遺伝子の同定と、それに影響を与える環境因子、生活因子との交絡を見出すことをめざしています。

<主な業績>
  • Chiyonobu T, et al, Partial tandem duplication of GRIA3 in a male with mental retardation. Am J Med Genet 143:1448-1455, 2007

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